「お父さんと、別れることにしたの」――その一言を、どう伝えますか?
伝え方ひとつで、子どもの受け止めは大きく変わります。今日は、その「型」をお渡しします。
この記事では、法務省認証ADR機関である株式会社チャイルドサポートが、弁護士・佐々木裕介監修のもと、Child Mind Institute や OurFamilyWizard など海外の主要な離婚ガイドラインを参照しながら、年齢別の伝え方、必ず伝える3つ・避ける3つを、その場で使える保存版ガイドとしてお届けします。
シリーズ第三部(実践編)の最初の回です。
なぜ「型」が必要なのか
離婚を子どもに伝えるとき、多くの親は「何をどう言えばいいのか分からない」と悩みます。
そのため、結局、夫婦ゲンカの流れで「もう離婚するから」と言ってしまったり、勢いで伝えてしまったり、片方の親が一方的に話してしまったりすることが少なくありません。
伝え方の失敗は、子の心に強い衝撃を残します。「自分のせいかもしれない」「家族が壊れる」――この時の経験は、長年、子の心に居座ります。
しかし、逆に言えば、伝え方の「型」を知っていれば、リスクの大部分は避けられるのです。
ポイント1:伝える「前」の、3つの準備
伝える前に、3つの準備を行います。
①いつ(WHEN)
- 離婚が決まってから、引っ越しなど大きな変化が起きる前に
- 心に余裕のある、穏やかな週末の朝などがよい
- 親自身が落ち着いて話せる状態であること
②どこで(WHERE)
- 安心できる自宅で、邪魔が入らない時間に
- 外出先や移動中は避ける
- スマートフォンを置き、テレビを切る
③誰が(WHO)
- できれば、両親そろって伝える
- 「対立していても、あなたへの愛は二人とも同じ」だと、態度で示せる
- そろって伝えるのが難しい場合は、二人が「同じ説明をする」と事前に約束
特に「両親そろって伝える」ことの意味は大きいです。子は、両親が同じ場で同じメッセージを発する姿を見ることで、「ふたりは敵同士ではない」「自分は安全だ」と感じられます。
詳しくは別記事「子どもが見せる10のサイン」も合わせてご覧ください。
事例:一度は失敗。でも、伝え直したIさん
ここで、ある親子の話を紹介します(複数のご相談を組み合わせたフィクションですが、似た状況のご家庭は本当に多いのです)。
Iさん(39歳)は、小学生のお子さんを持つお母さんでした。最初は、夫婦ゲンカの流れで、つい食卓で言ってしまったそうです。
「もう、お父さんとは別れるから」
お子さんは、固まったまま黙っていたそうです。
数日後、Iさんは思い直し、元夫に頼んで、二人そろって、もう一度伝え直しました。
「この前は、ママも動揺していて、うまく言えなかった。もう一度、ちゃんと話させてね」
そして、こう伝えたそうです。
「あなたのせいじゃない。パパもママも、ずっとあなたが大好き」
その時、お子さんは初めて、ぽろぽろと泣いたそうです。
Iさんが大切にしたのは、「やり直す勇気」でした。一度失敗しても、もう一度伝え直すことで、子は受け止め直す機会を得ることができます。完璧でなくていいのです。誠実に向き合い直す姿を、子はちゃんと見ています。
ポイント2:年齢別の伝え方 — 言葉を、その子に合わせる
子どもの年齢によって、伝え方は大きく変えます。
幼児期(〜5歳)
- 短く・具体的に
- 「一緒に住まないけど、2人ともあなたが大好き」
- 同じことを、繰り返し伝える
- 難しい理由は説明しない
幼児期の子は、言葉の細部より「親の感情」と「自分への愛情の継続」を感じ取ります。シンプルなメッセージを、安定した声で、繰り返してあげてください。
学童期(6〜11歳)
- 生活がどう変わるか具体的に
- 「どっちの家にも行けるよ」と安心させる
- 質問には、正直に答える
- 感情を出していいと伝える
学童期の子は、変化への不安を強く感じます。「学校はどうなるの?」「家はどうなるの?」――こうした具体的な疑問に、誠実に答えてあげてください。
思春期(12歳〜)
- 誠実に、ある程度の事実を
- ただし、大人の詳細は話さない
- 本人の気持ち・意見を聞く
- 生活への影響を一緒に考える
思春期は、もう「一人の人」として向き合う時期です。子の意見を聞き、生活設計に巻き込んでいくスタンスが、信頼を保ちます。
ポイント3:年齢を問わず — 必ず伝える3つ、避ける3つ
ここからは、本回の保存ポイントです。
必ず伝える3つ
01. 「あなたのせいじゃない」
子どもは、親の離婚を「自分のせいではないか」と思いがちです。明確に否定してあげることが、何より大切です。
02. 「パパもママも、ずっとあなたを愛してる」
両親からの愛が、離婚によって失われないことを、繰り返し伝えます。
03. 「家族の形が変わるだけ。あなたは大切なまま」
家族が「消える」のではなく「変わる」のだ、というメッセージは、子の安心感を支えます。
伝えてはいけない3つ
01. 相手の悪口・責任追及
「お父さんが悪い」――これは、子の半分を否定することになります。「自分の半分が悪い」と感じてしまいます。
02. 大人の詳細
不倫、お金の生々しい話、夫婦間の傷つけ合い――これらは、子には重すぎます。シンプルな説明にとどめます。
03. 子に選択を委ねる
「どっちと住みたい?」――選択を強いることは、子には暴力性を持ちます。住居の決定は、親の責任です。
よくある質問(FAQ)
Q1. もう感情的に伝えてしまった後でも、やり直すことはできるんでしょうか?
はい、やり直せます。むしろ、やり直す姿にこそ意味があります。「この前は、ママも動揺していて、うまく言えなかった。もう一度、ちゃんと話させてね」と言って、改めて時間を作ればいいんです。親が誠実に向き合い直す姿を、子どもはちゃんと見ています。
Q2. 両親そろって伝えるのが難しい場合は、どうすればよいですか?
そろって伝えるのが難しくても、二人が「同じ説明をする」と事前に約束しておくことが重要です。子どもが矛盾した話で混乱しないように、伝えるメッセージのコアを揃えます。具体的には、「あなたのせいじゃない/パパもママもずっと愛している/家族の形が変わるだけ」の3点を、両親とも同じように伝える、と決めておくことです。
Q3. 子どもに離婚理由を聞かれたら、どこまで答えればよいですか?
大人の詳細(不倫、お金の生々しい話)は伝えてはいけません。年齢に応じた説明にとどめます。たとえば、「お父さんとお母さんは、考え方が違ってしまったの。これは大人同士の問題で、あなたには関係がない」など、子の年齢で理解できる範囲の説明に絞ります。
まとめ:最初の一言を、紙に書いて準備する
ここまでをまとめます。
- 伝える前に「いつ・どこで・誰が」を決める。できれば両親そろって。
- 言葉は、子の年齢に合わせる。幼児はシンプルに、思春期は誠実に。
- 必ず伝える3つ:あなたのせいじゃない/ずっと愛してる/大切なまま。
今日からできる一歩としては、伝える前に、最初の一言を、紙に書いて準備してみることです。声に出して練習しておくと、当日、ぐっと落ち着いて話せます。
参考文献・出典
- Child Mind Institute. “When Should We Tell Our Kids That We’re Getting a Divorce?”
- OurFamilyWizard. “Talking to Your Kids About Divorce: Age-Appropriate Strategies.”
- Today’s Parent. “How to tell kids about divorce: An age-by-age guide.”
- 福丸由佳『離婚を経験する親子を支える心理教育プログラム FAIT ―ファイト―』金子書房.
次回の記事
次回は、「『協力できる親』になるための3ステップ — Co-parenting実践編」。
15年追跡で効果が実証された New Beginnings Program の知見から、相手の協力なしでも「一人で8割は変えられる」3ステップをお届けします。
YouTubeでも解説しています
この記事の内容は、YouTubeチャンネル「Families In Transition」でも、弁護士・佐々木裕介と聞き手・ふたばによる対話形式で解説しています。記事と動画を併せてご覧いただくと、より理解が深まります。
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