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パートナーシップ合意書に書くべき10項目

2026 7/07
事実婚・パートナーシップ
2026年7月7日

事実婚・同性カップルなど、婚姻届によらないパートナー関係を法的に支える中心的な書面が「パートナーシップ合意書」です。結論からいえば、合意書には「日常の生活のルール」「もしもの医療・死亡時」「関係解消時の清算」の3層をバランスよく盛り込むことが重要で、公正証書にしておけば実効性が大きく高まります。この記事では、実務で盛り込むことの多い10項目を、書き方のポイントとともに弁護士監修のもとで解説します。

目次
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パートナーシップ合意書とは

パートナーシップ合意書は、ふたりの関係の確認と、生活・財産・もしもの時のルールを定める契約書です。婚姻届のような身分関係の創設はできませんが、契約として、公序良俗に反しない範囲で法的な効力を持ちます。自治体のパートナーシップ宣誓制度(証明書の交付)とは役割が異なり、宣誓制度が「対外的な証明」、合意書が「ふたりの間の権利義務の設計」と整理できます。両方を組み合わせるのが実務的です。

書くべき10項目

1. 関係の確認

ふたりが婚姻に準ずるパートナー関係にあること、互いに協力して共同生活を営む意思を確認する条項です。事実婚の場合、この条項は「婚姻意思と共同生活の実態」を示す証拠となり、社会保険の手続きや慰謝料請求の場面で関係性を立証する助けになります。

書き方の例:「甲及び乙は、婚姻に準ずるパートナーとして、相互に協力しながら共同生活を営むことを確認する。」

2. 生活費の分担

収入に応じた分担割合、共通口座への拠出額、住居費・食費・水道光熱費などの負担区分を定めます。「収入の変動があった場合は協議して見直す」という調整条項も入れておくと実用的です。

書き方の例:「共同生活に要する費用は、甲乙それぞれの収入の割合に応じて分担し、毎月末日までに各自の分担額を共同口座に入金する。収入に大きな変動があったときは、分担割合を協議のうえ見直す。」

3. 財産の帰属・管理

各自が関係開始前から持つ財産と、共同生活中に各自の名で取得した財産の帰属を明確にします。共同で購入する住居・車などの持分や名義、共同口座の扱いもここで定めます。後述の清算条項とセットで、関係解消時の紛争を大きく減らせる中核条項です。

書き方の例:「本契約の締結前から各自が有する財産、及び共同生活中に各自の名で取得した財産は、それぞれの特有財産とする。共同で取得した財産は、取得の際に持分を書面で定める。」

4. 家事・仕事の分担方針

法的強制力というより、生活設計の合意として意味を持つ条項です。一方がキャリアを抑えて家事・育児を担う場合は、その貢献を清算条項(後述)でどう評価するかにつながるため、方針を言語化しておく価値があります。

書き方の例:「家事は甲乙が分担して行い、具体的な分担は双方の就労状況に応じて随時協議して定める。一方が家事・育児を主に担う期間の貢献は、財産の清算にあたり考慮する。」

5. 医療に関する事項

入院・手術の際に、互いをキーパーソン(病状説明の相手・面会者)として扱うことに同意する旨、医療情報の開示に同意する旨を定めます。医療機関の運用はさまざまですが、書面があれば「家族ではないので説明できません」という場面を減らす助けになります。判断能力が低下した場合に備える任意後見契約や、医療上の希望を示す書面(事前指示書)と組み合わせると、より確実です。

書き方の例:「甲及び乙は、相手方が入院又は手術を要する状態となったときは、互いを緊急連絡先及び病状の説明を受ける者として扱うことに同意し、医療機関に対する医療情報の開示に同意する。」

6. 子どもに関する事項

子どもがいる場合・持つ予定がある場合は、認知(胎児認知を含む)の方針、養育方針、教育費の分担、万一関係を解消する場合の監護・養育費・面会交流の考え方を定めます。事実婚の子どもの法律関係は事実婚の子どもと認知・養育費の取り決めで詳しく解説しています。※親権など子の福祉に関わる事項は、最終的には子の利益を基準に判断されるため、合意書はあくまで方針の確認という位置づけになります。

書き方の例:「甲乙間に子が出生したときは、父は速やかに認知の手続を行う。子の養育に要する費用は、甲乙が収入に応じて分担する。」

7. 関係解消時の財産清算

関係を解消する場合の財産の分け方(共同形成財産の清算割合、共同名義住居の処理、共同口座の精算方法など)を定めます。事実婚の解消では財産分与の規定の類推適用が実務ですが、同性カップルなど関係の法的性質に議論があるケースでは、契約で清算ルールを定めておくことの意味がいっそう大きくなります。清算の基本的な考え方は事実婚の財産分与・生活費はどうなるをご覧ください。

書き方の例:「本関係を解消するときは、共同生活中に甲乙の協力により形成した財産を、原則として2分の1ずつの割合で清算する。特有財産は清算の対象としない。」

8. 解消時の手続き・住まい

解消の意思表示の方法(書面によることなど)、共同住居からの退去の猶予期間、賃貸借契約の名義の扱い、当面の生活費の支援などを定めます。「別れ方」をあらかじめ決めておくことは縁起の悪い話ではなく、感情的な対立で生活基盤が壊れることを防ぐ、互いへの思いやりです。

書き方の例:「本関係の解消は、書面による申入れをもって行う。共同住居を退去する者には、申入れの日から相当期間(例:3か月)の退去猶予を認め、猶予期間中の住居費の負担は協議して定める。」

9. 死亡時の取り扱い(遺言との連携)

合意書だけではパートナーに相続権を与えることはできません。死亡時の財産の承継は遺言で、確実な資金は生命保険の受取人指定で行う必要があります。合意書には「互いに遺言を作成し維持する」「葬儀・埋葬に関する希望」などを定め、遺言・保険・死後事務委任契約と役割分担させるのが実務です。具体策は事実婚の相続対策:遺言・生命保険受取人の指定で解説しています。

書き方の例:「甲及び乙は、互いを受遺者とする遺言を作成し、これを維持するよう努める。一方が死亡したときの葬儀・埋葬は、別途書面で定める希望に従って行う。」

10. 見直し・紛争解決条項

定期的な見直し(例:3年ごと、転職・出産・住宅購入などの節目)、変更は書面によること、紛争が生じた場合はまず協議し、必要に応じて調停等を利用することなどを定めます。生活の変化に合わせて育てていく契約であることを、条項の形で担保しておきましょう。

書き方の例:「本契約は、締結から3年ごと、又は転職・出産・住宅取得その他生活の重要な変化があったときに、甲乙協議のうえ見直すものとする。本契約の変更は、書面によらなければ効力を生じない。紛争が生じたときは、まず誠実に協議し、調わないときは調停等の手続を利用する。」

公正証書にする意義

  • 証明力:公証人の面前で作成されるため、後から「そんな合意はしていない」という争いになりにくくなります。
  • 強制執行:生活費の支払いなど金銭債務について強制執行認諾文言を付ければ、不払い時に裁判を経ずに差押えが可能になります。
  • 保管の安心:原本が公証役場に保管され、紛失・改ざんの心配がありません。

費用は財産額・条項数などによりますが、得られる安心に比べれば十分に合理的な投資といえます。

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  • 事実婚の財産分与・生活費はどうなる
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まとめ

パートナーシップ合意書は、「関係の確認」「生活費・財産・家事」「医療・子ども」「解消時の清算・手続き」「死亡時の連携」「見直し」という3層10項目で設計すると、日常からもしもの時までを一貫してカバーできます。合意書は万能ではなく、相続は遺言、判断能力の低下は任意後見と、他の制度との組み合わせが前提です。おふたりの関係と財産の実情に合わせた条項設計は、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

よくある質問

Q. パートナーシップ合意書に法的な効力はありますか?
A. あります。契約として、公序良俗に反しない範囲で当事者を拘束します。特に生活費・財産・清算に関する条項は実効性が高く、公正証書にすれば金銭債務の強制執行も可能になります。ただし相続権の付与など、契約ではできない事項もあります。

Q. 自治体のパートナーシップ宣誓制度を使えば、合意書は不要ですか?
A. 宣誓制度は関係の証明に有効ですが、財産・生活費・清算などの権利義務までは定められません。証明は宣誓制度、権利義務の設計は合意書、と役割が異なるため、併用をおすすめします。

Q. 同棲を始めたばかりでも作れますか?
A. 作れます。むしろ共同生活の初期に、財産の帰属や生活費のルールを決めておくほうが、後からの紛争を防ぎやすくなります。関係の深まりに応じて条項を見直していけば十分です。

Q. 合意書はふたりで作って署名すれば有効ですか?公正証書でないとだめですか?
A. 私製の合意書でも契約としては有効です。ただし証明力・強制執行の面で公正証書が大きく勝るため、生活費の支払いなど金銭条項を含む場合は特に公正証書化をおすすめします。


監修:佐々木 裕介(弁護士)
第二東京弁護士会所属/弁護士登録番号 48715/チャイルドサポート法律事務所 代表
家族の法律問題(離婚・養育費・再婚・事実婚・相続)を専門に取り扱う。

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