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事実婚の財産分与・生活費はどうなる

2026 7/07
事実婚・パートナーシップ
2026年7月7日

「籍を入れていないから、別れても財産はもらえないし、生活費も請求できない」——そう思い込んでいる方は少なくありませんが、これは誤解です。結論からいえば、事実婚(内縁)でも、関係が続いている間の生活費(婚姻費用)の分担を求めることができ、関係を解消するときには法律婚に準じた財産分与を請求できるというのが裁判実務の考え方です。ただし「死別」の場合は扱いが大きく異なるなど、事実婚特有の落とし穴もあります。この記事では、事実婚の生活費と財産分与のルールを弁護士監修のもとで解説します。

目次
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前提:事実婚は「婚姻に準ずる関係」として保護される

婚姻の意思を持って夫婦としての共同生活を送る事実婚(内縁)について、最高裁は古くから「婚姻に準ずる関係」として法的保護を認めてきました(最高裁昭和33年4月11日判決)。この考え方を土台に、夫婦間の同居・協力・扶助義務や婚姻費用の分担に関する規定は、事実婚にも準用されると解されています。

関係が続いている間:生活費(婚姻費用)を分担する義務

事実婚のパートナー同士は、収入・資産に応じて共同生活の費用(婚姻費用)を分担する義務を負うと考えられています。そのため、たとえば一方が生活費をまったく入れない場合、他方は婚姻費用の分担を求める調停を家庭裁判所に申し立てることができます。金額は、法律婚と同様に、裁判所が公表する算定表の考え方を参考に双方の収入から算出されるのが一般的です。

もっとも、事実婚では法律婚以上に「関係の存在」自体が争われやすいため、住民票の「妻(未届)」記載やパートナーシップ合意書など、関係を証明できる資料を整えておくことが重要です。生活費の分担割合をあらかじめ合意書で定めておけば、紛争自体を予防できます。

関係を解消するとき:財産分与を請求できる

財産分与の類推適用が実務

事実婚を解消する場合、裁判実務は、離婚時の財産分与の規定(民法768条)を類推適用して、共同生活中に形成された財産の清算を認めています。考え方は法律婚とほぼ同じです。

  • 対象:共同生活中にふたりの協力で形成・維持された財産(預貯金、不動産、車など)。名義がどちらかは決定的ではありません。
  • 対象外:関係開始前からの各自の財産、相続・贈与で得た財産(特有財産)。
  • 割合:寄与の程度に明らかな差がなければ2分の1ずつとする運用が定着しています。専業主婦(主夫)としての家事労働も財産形成への寄与と評価されます。

あわせて問題になるもの

  • 慰謝料:正当な理由のない一方的な破棄(不当破棄)や不貞行為があった場合、慰謝料請求が認められることがあります。
  • 子どもの養育費:認知があれば、法律婚の離婚と同様に養育費を取り決められます。
  • 年金分割:事実婚でも、国民年金第3号被保険者として認定されていた期間については、厚生年金の分割(3号分割)の対象となり得ます。要件・手続きは年金事務所にご確認ください。

手続きの流れ

①当事者の協議 → ②合意できれば書面化(金銭の支払いを含むなら強制執行認諾文言付き公正証書が安心) → ③まとまらなければ家庭裁判所の調停・審判という流れは、法律婚の離婚とほぼ同じです。財産分与の請求には期間の制限がある点にも注意してください(法律婚の離婚では、2026年4月施行の改正民法により2年から5年に伸長されました。事実婚の解消への当てはめはケースによるため、早めの行動が安全です)。

最大の落とし穴:「死別」では財産分与を使えない

注意すべきは、パートナーの死亡によって事実婚が終了した場合です。最高裁は、死亡による内縁解消の場面では財産分与の規定を類推適用できないと判断しています(最高裁平成12年3月10日決定)。つまり、生きて別れれば財産分与を請求できるのに、死別では財産分与も相続権もないという状態になります。

この空白を埋める手段が、遺言・生命保険の受取人指定・死因贈与契約といった生前の備えです。詳しくは事実婚の相続対策:遺言・生命保険受取人の指定をご覧ください。

紛争を防ぐ最善策:パートナーシップ合意書

事実婚の財産トラブルの多くは、「関係の存在」「財産の帰属」「清算のルール」が曖昧なことから生じます。パートナーシップ合意書で、①各自の特有財産の確認、②生活費の分担、③共同で取得する財産の持分、④解消時の清算方法を定めておけば、これらの争点をあらかじめ潰しておけます。盛り込むべき項目の全体像はパートナーシップ合意書に書くべき10項目で解説しています。

関連記事

  • パートナーシップ合意書に書くべき10項目
  • 事実婚の相続対策:遺言・生命保険受取人の指定

まとめ

事実婚でも、関係が続いている間は生活費の分担を求めることができ、解消時には財産分与に準じた清算を請求できるのが実務です。一方で、死別の場合には財産分与も相続権もないという大きな空白があり、ここは遺言・保険などの生前対策でしか埋められません。「関係の証明」と「財産のルールの書面化」という2つの備えを早めに整え、具体的な清算の見通しや取り決めの設計は専門家にご相談ください。

よくある質問

Q. 10年同棲していれば、自動的に財産分与を請求できますか?
A. 期間だけでは決まりません。「婚姻の意思を持った夫婦としての共同生活」という事実婚の実態が必要で、単なる同棲(ルームシェアや交際段階)と評価されると財産分与の類推適用は難しくなります。住民票や家計の共同性など、実態を示す資料が重要です。

Q. 財産はすべて相手名義です。それでも分与を請求できますか?
A. 共同生活中にふたりの協力で形成された財産であれば、名義がどちらかにかかわらず清算の対象になり得ます。家事労働による寄与も評価されます。

Q. 事実婚の解消で慰謝料を請求できるのはどんな場合ですか?
A. 代表的なのは、正当な理由のない一方的な破棄や、不貞行為・暴力などによって関係が壊れた場合です。認められるか・金額は事情により大きく異なるため、証拠を確保のうえ専門家にご相談ください。

Q. パートナーが亡くなりました。長年連れ添ったのに何も受け取れないのでしょうか?
A. 相続権はなく、死別の場合は財産分与の類推適用も認められないとされています。ただし、遺言・生命保険があればそれにより受け取れますし、遺族年金は事実婚も対象になり得ます。相続人がいない場合には特別縁故者の制度もあります。状況を整理して専門家にご相談ください。


監修:佐々木 裕介(弁護士)
第二東京弁護士会所属/弁護士登録番号 48715/チャイルドサポート法律事務所 代表
家族の法律問題(離婚・養育費・再婚・事実婚・相続)を専門に取り扱う。

「パートナーシップ合意書」について、弁護士に相談できます。

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