再婚や収入の変化をきっかけに、いったん取り決めた養育費を「増額したい」「見直したい」と考える方は少なくありません。結論から言えば、養育費は一度決めたら一生固定というものではなく、事情の変化があれば再度取り決め直すことができます。ただし自動では変わらず、相手との合意、まとまらなければ家庭裁判所の調停・審判という手順を踏みます。この記事では、増額・再取り決めが認められやすい場面と、実際の進め方を整理します。
養育費は「事情の変更」があれば見直せる
いったん合意した養育費でも、その後に前提が大きく変わった場合には変更を求めることができます。民法766条2項は、子の監護に関する事項について必要があるときは家庭裁判所が変更できる旨を定めており、扶養の程度・方法についても同法880条が事情変更による変更を認めています。ポイントは「取り決めの当時に予測できなかった、その後の事情の変化」があるかどうかです。
増額が検討されやすい主なケース
- 支払う側(義務者)の収入が大きく増えた
- 受け取る側(権利者)の収入が大きく減った、失職した
- 子の進学(高校・大学など)や病気・けがで、想定を超える費用がかかるようになった
- 物価や教育費の水準が取り決め当時と大きく変わった
逆に、支払う側の収入減少や、権利者の再婚・養子縁組などは減額の理由として主張されることがあります。再婚と養子縁組が養育費に与える影響については、養子縁組をすると元夫の養育費はどうなる?で詳しく解説しています。
金額はどう決まるのか
家庭裁判所の実務では、双方の収入や子の人数・年齢をもとにした標準的な算定方式(いわゆる算定表の考え方)を目安に判断されるのが一般的です。もっとも、具体的な金額は個々の収入資料や事情によって大きく変わるため、「いくら増える」と一律に示せるものではありません。私的な合意であれば、算定表にとらわれず当事者が納得する額で定めることも可能です。
再取り決め・増額の進め方
1. まずは当事者間の協議
最初のステップは相手との話し合いです。増額を求める理由(収入の変化や進学など)と、希望する金額・始期を具体的に示すと話が進みやすくなります。合意ができたら、口約束にせず書面化しておくことが重要です。
2. 合意できたら公正証書に
合意内容は、強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくと、万一支払いが滞ったときに裁判をせずに差押えへ進める備えになります。すでに前の公正証書がある場合の扱いは、再婚時に離婚公正証書は見直すべき?もあわせてご確認ください。
3. まとまらなければ調停・審判
話し合いで折り合えない場合は、家庭裁判所に養育費(増額)請求の調停を申し立てます。調停でも合意に至らないときは、審判に移行して裁判所が判断します。増額が認められる場合、その始期は請求(申立て)の時点とされることが多いとされていますが、事案により異なります。
知っておきたい注意点
- 過去にさかのぼっての増額は限定的:一般に、請求した時点より前の分をさかのぼって増額するのは難しいとされています。「増やしたい」と思ったら、早めに意思表示をしておくことが大切です。
- 2026年4月施行の改正民法:共同親権や法定養育費などの新しい制度が導入されています。もっとも、事情変更による見直しという基本的な枠組み自体が大きく変わるわけではありません。最新の運用は個別にご確認ください。
関連記事
まとめ
養育費は「事情の変化」があれば再取り決め・増額を求めることができます。基本の流れは、協議 → 合意なら公正証書化 → まとまらなければ調停・審判です。増額の始期は請求時点とされることが多いため、必要を感じたら早めに動くことがポイントです。ご自身のケースで見直せるか迷うときは、書面作成の前提として弁護士にご相談ください。
よくある質問
Q. 相手が話し合いに応じてくれません。
A. 家庭裁判所の養育費請求(増額)調停を申し立てることができます。第三者である調停委員を介して話し合いを進め、合意できなければ審判で裁判所が判断します。
Q. 一度「増額しない」と合意していても、あとから請求できますか?
A. その後にさらに大きな事情の変化があれば、改めて請求できる場合があります。ケースにより判断が分かれるため、個別にご確認ください。
Q. 増額はいつ分から反映されますか?
A. 調停・審判では、請求(申立て)の時点を始期とすることが多いとされていますが、事案によって異なります。
第二東京弁護士会所属/弁護士登録番号 48715/チャイルドサポート法律事務所 代表
家族の法律問題(離婚・養育費・再婚・事実婚・相続)を専門に取り扱う。

