事実婚(内縁)を解消するとき、「財産はどう分けるのか」「生活費や慰謝料は請求できるのか」「子どもがいる場合は」といった不安が生じます。事実婚は、届出をしていない点を除けば夫婦としての実質を備えた関係(準婚)として扱われ、解消の場面では法律婚の離婚に近いルールが一部準用されます。この記事では、事実婚を解消するときの主な取り決めと、公正証書に残しておくべきことを整理します。
事実婚の解消で問題になること
事実婚の解消では、主に次のような点が問題になります。ひとつずつ見ていきます。
- 財産分与(共同で築いた財産の清算)
- 生活費・婚姻費用に相当する精算
- 不当な関係解消による慰謝料
- 子どもがいる場合の認知・養育費・親権
財産分与は「準用」される
判例上、内縁関係は婚姻に準じる関係と評価され(最高裁昭和33年4月11日判決)、関係を解消する際には、法律婚の離婚に関する財産分与の規定(民法768条)が類推適用されると考えられています。つまり、二人で協力して築いた財産は、事実婚であっても清算の対象になり得ます。
ただし注意点があります。最高裁は、内縁が一方の死亡によって終了した場合には、財産分与の規定を類推適用することはできないと判断しています(最高裁平成12年3月10日決定)。生前の解消と死別とで扱いが異なる点は、相続対策を考えるうえでも重要です。詳しくは事実婚の相続対策をご確認ください。
生活費・慰謝料について
婚姻費用の分担に相当する生活費の清算も、準婚の考え方から問題になることがあります。また、正当な理由なく一方的に関係を破棄された場合には、不当破棄として慰謝料を請求できることがあります。いずれも個別の事情に大きく左右されるため、一律の基準を示すことは難しく、ケースにより異なります。
子どもがいる場合
事実婚の間に生まれた子は、父の認知がなければ父との法律上の親子関係が生じません。認知があれば、父にも扶養義務が生じ、養育費を請求できます。なお、婚姻していない父母の場合、親権は原則として母にあります(2026年4月施行の改正民法により、認知後に父母の協議で共同親権を選択できる場合があります)。認知と養育費の取り決めについては、事実婚の子どもと認知・養育費の取り決めで詳しく解説しています。
取り決めは公正証書に残す
解消時の合意は、口約束ではなく書面、できれば公正証書にしておくことをおすすめします。特に、養育費や分割払いの金銭の取り決めは、強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくと、支払いが滞ったときに裁判をせずに差押えへ進める備えになります。公正証書に残しておきたい主な項目は次のとおりです。
- 財産分与の内容(分ける財産・金額・時期)
- 解決金・慰謝料の有無と支払方法
- 子がいる場合の養育費・面会交流
- 清算条項(これ以上互いに請求しないことの確認)
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まとめ
事実婚の解消では、財産分与の規定が類推適用され、生活費・慰謝料・子の養育費なども問題になります。一方で、死別の場合は財産分与の類推が認められないなど、法律婚と異なる注意点もあります。合意した内容は公正証書に残しておくと安心です。取り決めの書面化をお考えの際は、弁護士にご相談ください。
よくある質問
Q. 事実婚でも財産分与を請求できますか?
A. 生前に関係を解消する場合は、法律婚の財産分与の規定が類推適用されると考えられています。ただし死別の場合は類推適用されないとされており、扱いが異なります。
Q. 相手が一方的に関係を解消しました。慰謝料は請求できますか?
A. 正当な理由のない不当破棄と評価される場合には、慰謝料を請求できることがあります。事情により結論が異なるため、個別にご確認ください。
Q. 子どもの養育費はどうなりますか?
A. 父が認知していれば、父にも扶養義務が生じ養育費を請求できます。認知がない場合は、まず認知を求めることが出発点になります。
第二東京弁護士会所属/弁護士登録番号 48715/チャイルドサポート法律事務所 代表
家族の法律問題(離婚・養育費・再婚・事実婚・相続)を専門に取り扱う。

