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財産分与の計算方法とは?対象財産・割合・注意点を徹底解説

2025 9/05
Uncategorized
2025年9月5日

離婚を検討している方にとって、財産分与は避けて通れない重要な問題の一つです。夫婦が長年にわたって築き上げてきた財産を、どのように公平に分け合うべきなのか。この計算は一見複雑に思えますが、正しい知識と手順を理解すれば、適切に進めることができます。

本記事では、財産分与の基本的な仕組みから具体的な計算方法、注意すべきポイントまで、専門知識がない方でもわかりやすく解説します。実際の計算例も交えながら、財産分与について包括的に理解できる内容となっています。

目次

1. 財産分与とは

財産分与とは、離婚時に夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を、それぞれの貢献度に応じて分け合う制度です。この制度は民法第768条に明文化されており、離婚に伴う重要な法的手続きの一つとなっています。

財産分与の目的と意義

財産分与の根本的な目的は、夫婦の共同生活において形成された財産を公平に分配することにあります。結婚生活では、たとえ一方の名義になっている財産であっても、配偶者の家事労働や精神的支援、経済的協力によって形成・維持されているケースが大半です。

例えば、夫が会社員として収入を得ている間、妻が家事や育児を担当している場合を考えてみましょう。この場合、給与口座や住宅は夫名義かもしれませんが、妻の家庭内での貢献があったからこそ、夫が仕事に専念し、財産を築くことができたのです。

また、共働きの夫婦であっても、それぞれの収入や支出の管理方法によって、一方の名義に偏った財産形成がなされることがあります。こうした状況において、単純に名義だけで財産の帰属を決めることは公平性を欠くため、財産分与によって適切な調整が行われるのです。

財産分与の法的根拠

民法第768条第1項では「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と規定されています。この条文が財産分与請求権の根拠となっており、離婚をした者であれば誰でも相手方に対して財産分与を求めることができます。

重要なのは、この請求権は離婚の原因や過失の有無に関係なく認められることです。たとえ自分に離婚の原因があったとしても、婚姻期間中に形成された財産に対する貢献が認められる限り、財産分与を受ける権利があります。

ただし、財産分与請求権には時効があります。離婚の日から2年以内に請求しなければ、この権利は消滅してしまうため、離婚後は速やかに手続きを進める必要があります。

財産分与の種類

財産分与には、その性質に応じて以下の3つの種類があります。

清算的財産分与は、夫婦が婚姻期間中に共同で形成した財産を清算する目的で行われる分与です。これが財産分与の中核をなしており、最も一般的な形態です。夫婦の協力によって築かれた財産を、その貢献度に応じて分配します。

扶養的財産分与は、離婚後の一方の配偶者の生活保障を目的とした分与です。特に専業主婦(夫)や高齢者、病気などで働くことが困難な場合に、離婚後の経済的自立までの期間を支援する意味があります。

慰謝料的財産分与は、精神的苦痛に対する慰謝料としての性格を持つ分与です。ただし、現在では慰謝料と財産分与は別々に請求することが一般的であるため、この形態はあまり使われていません。

実際の離婚手続きにおいて最も重要になるのは清算的財産分与であり、本記事でも主にこの清算的財産分与の計算方法について詳しく解説していきます。

2. 財産分与の対象財産

財産分与を正確に計算するためには、まず何が分与の対象となるかを明確に理解する必要があります。すべての財産が対象となるわけではなく、「共有財産」と「特有財産」を適切に区別することが重要です。

共有財産(対象になるもの)

共有財産とは、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産のことです。名義がどちらか一方になっていても、夫婦の協力によって形成された財産であれば共有財産として扱われます。

預貯金は最もわかりやすい共有財産の例です。婚姻期間中に形成された預貯金は、名義に関係なく原則として共有財産となります。ただし、婚姻前から持っていた預金と婚姻後に蓄積された部分を明確に区別する必要があります。

具体的には、結婚時点での預金残高を基準として、それ以降に増加した部分が財産分与の対象となります。給与の振込先口座であれば、結婚後の入金分から生活費を差し引いた蓄積分が共有財産となります。

不動産についても、婚姻期間中に購入した自宅や土地は共有財産となります。住宅ローンを組んで購入した場合でも、夫婦の協力によって取得されたものとして扱われます。この場合、不動産の評価額からローン残高を差し引いた純資産が分与対象となります。

マンションや一戸建ての評価については、離婚時点での時価を基準とします。購入時の価格ではなく、現在の市場価格で評価することが重要です。

自動車も婚姻期間中に購入されたものであれば共有財産となります。自動車の場合、購入からの経過年数による減価償却を考慮した現在価値で評価されます。一般的には、ディーラーでの下取り価格や中古車市場での相場価格を参考にします。

有価証券・株式については、婚姻期間中に購入したものが対象となります。株価は日々変動するため、離婚時点での時価で評価します。投資信託や債券についても同様の扱いとなります。

退職金の扱いは複雑です。既に受給している退職金は明確に対象となりますが、将来受給予定の退職金についても、婚姻期間に対応する部分は共有財産として扱われます。

退職金の計算では、まず支給見込み額を算出し、そこから婚姻期間に相当する部分を按分して求めます。例えば、勤続30年で退職金2,400万円の見込みがあり、そのうち婚姻期間が20年である場合、2,400万円×(20年÷30年)=1,600万円が財産分与の対象となります。

家財道具についても、婚姻期間中に購入されたものは共有財産となります。ただし、家電製品や家具などは経年劣化により価値が大幅に下がることが多いため、実際の財産分与計算では大きな影響を与えないケースが多いです。

特有財産(対象外になるもの)

特有財産とは、夫婦の一方が単独で所有し、財産分与の対象とならない財産のことです。これらの財産は、夫婦の協力によって形成されたものではないため、離婚時にも元の所有者が引き続き所有することになります。

婚姻前に所有していた財産は、最も典型的な特有財産です。結婚前から持っていた預貯金、不動産、自動車、株式などは、配偶者の貢献によって形成されたものではないため、財産分与の対象外となります。

ただし、注意が必要なのは、婚姻前の財産と婚姻後に形成された財産が混合している場合です。例えば、結婚前から持っていた預金口座に、結婚後の給与が振り込まれているような場合、適切な分離計算が必要となります。

相続・贈与で得た財産も特有財産として扱われます。結婚後に相続で取得した不動産や、親からの贈与で得た資金などは、配偶者の協力とは無関係に取得されたものであるため、原則として分与対象外です。

ただし、相続財産であっても、夫婦の協力によって価値が維持・向上された場合には、その増加分については共有財産として扱われることがあります。例えば、相続した古い家屋を夫婦で協力してリフォームし、価値を高めた場合などです。

個人的な慰謝料も特有財産となります。交通事故の被害者として受け取った慰謝料や、第三者から受けた精神的損害に対する賠償金などは、純粋に個人に帰属するものとして、財産分与の対象外となります。

判断が困難なケース

実際の離婚手続きでは、共有財産と特有財産の区別が明確でない場合もあります。

事業所得や事業用資産は、判断が分かれやすい分野です。一方の配偶者が個人事業主や会社経営者である場合、事業の成功に配偶者がどの程度貢献したかによって、事業用資産の扱いが変わります。

配偶者が直接的に事業に関与していない場合でも、家庭を支えることで事業主が事業に専念できる環境を整えたという貢献が認められれば、事業用資産も財産分与の対象となる可能性があります。

保険契約についても注意が必要です。生命保険の解約返戻金は、婚姻期間中に支払った保険料に対応する部分が共有財産となります。一方、医療保険のように掛け捨て型の保険は、解約返戻金がないため財産分与の対象とはなりません。

借入金や負債の扱いも重要です。夫婦の共同生活のために負担した借入金(住宅ローン、子どもの教育ローンなど)は、マイナスの共有財産として、プラスの財産から差し引いて計算します。

一方、一方の配偶者が個人的な目的(ギャンブル、不倫相手との交際費など)で作った借金は、原則として特有財産(特有負債)として扱われ、財産分与の計算からは除外されます。

3. 財産分与の計算方法

財産分与の計算は、複数のステップを踏んで系統的に進める必要があります。各段階で正確な情報を収集し、適切な評価を行うことが、公平な分与結果につながります。

① 財産の洗い出し

財産分与計算の第一歩は、夫婦が所有するすべての財産を漏れなくリスト化することです。この作業は非常に重要で、後になって財産の存在が判明すると、分与のやり直しが必要になる場合もあります。

預貯金の確認では、両者名義のすべての口座を調査します。銀行、信用金庫、ゆうちょ銀行、ネット銀行など、利用している金融機関すべての残高を確認し、通帳やインターネットバンキングの画面を印刷して記録します。

定期預金や積立預金についても忘れずに確認する必要があります。また、子ども名義の口座であっても、実質的に夫婦の財産として管理されていた場合は、財産分与の対象となる可能性があります。

不動産の調査では、登記簿謄本を取得して正確な所有状況を確認します。自宅だけでなく、投資用不動産、駐車場、山林、農地なども含めてすべての不動産を洗い出します。

共有名義の不動産の場合は、それぞれの持分割合も確認します。また、住宅ローンがある場合は、金融機関から残高証明書を取得して正確な残債を把握します。

動産の確認では、自動車、バイク、高額な家電製品、貴金属、骨董品、美術品などをリストアップします。自動車については車検証で正確な年式や型式を確認し、査定書があれば参考にします。

金融商品の調査では、株式、投資信託、債券、外貨預金、FX取引の評価損益、仮想通貨などを確認します。証券会社や運用会社から取引残高報告書を取得し、離婚時点での評価額を把握します。

保険契約の確認では、生命保険、医療保険、学資保険、個人年金保険などの契約内容を調査し、解約返戻金の有無と金額を保険会社に照会します。

退職金・企業年金については、勤務先の人事部門に照会して、現時点での退職金支給見込み額や企業年金の積立状況を確認します。

② 財産の評価

財産の洗い出しが完了したら、次にそれぞれの財産を金銭的価値で評価します。評価の基準時点は離婚時(または離婚調停・訴訟の申立時)となります。

預貯金の評価は最もシンプルで、離婚時点での残高がそのまま評価額となります。定期預金の場合は、満期前であっても離婚時点で解約した場合の受取額で評価します。

不動産の評価は最も複雑で、専門的な知識が必要な分野です。不動産の評価方法には複数のアプローチがあります。

固定資産評価額は最も簡便な方法ですが、市場価格よりも低めに設定されているため、参考程度に留めるのが適切です。より正確な評価のためには、不動産鑑定士による鑑定評価や、複数の不動産業者による査定を取得することを推奨します。

マンションの場合は、同一棟内での最近の取引事例や、近隣の類似物件の成約価格を参考にすることもできます。一戸建ての場合は、土地と建物を分けて評価し、建物については築年数による減価償却も考慮します。

自動車の評価では、ディーラーでの下取り査定や中古車買取業者の査定額を参考にします。インターネット上の一括査定サービスを利用すれば、複数業者の評価を効率的に取得できます。

高級車やクラシックカー、特殊な改造が施された車両については、専門業者による評価が必要な場合もあります。

株式・有価証券の評価では、上場株式の場合は証券取引所での終値を基準とします。非上場株式の場合は、会社の財務状況や類似会社との比較による評価が必要となり、専門家のアドバイスが不可欠です。

投資信託の場合は、運用会社が公表している基準価額で評価します。外貨建て資産の場合は、離婚時点での為替レートで円換算して評価額を算出します。

退職金の評価は特に注意が必要な分野です。まず、退職金規程を確認し、現時点で自己都合退職した場合の支給額を算出します。その上で、婚姻期間に対応する部分を按分計算します。

計算式は以下のようになります: 退職金支給見込み額 × (婚姻期間 ÷ 勤続期間)

ただし、退職金制度は複雑で、勤続年数による係数の変化や、会社の業績による変動要素もあるため、人事部門での詳細な試算が必要です。

保険解約返戻金の評価では、保険会社に照会して、離婚時点で解約した場合の返戻金額を確認します。契約から年数が浅い場合は、支払済み保険料よりも解約返戻金が少なくなることもあります。

③ 純資産の算出

各財産の評価が完了したら、共有財産の総額から共有負債を差し引いて純資産を算出します。

資産の合計では、預貯金、不動産(評価額-ローン残高)、自動車、株式、退職金見込み額、保険解約返戻金、その他の資産をすべて合算します。

負債の合計では、住宅ローン残高、自動車ローン残高、教育ローン、カードローン、クレジットカードの分割払い残高など、夫婦の共同生活のために負担した借入金をすべて合算します。

純資産 = 共有財産の総額 - 共有負債の総額

この純資産が、財産分与によって分け合う対象となる金額です。

④ 分与割合の決定

純資産が算出できたら、それをどのような割合で分け合うかを決定します。

原則的な分与割合は、夫婦が平等に貢献したものとして、50対50(2分の1ずつ)とされています。これは、たとえ収入に差があっても、家事や育児、精神的支援なども含めて、夫婦が等しく家庭に貢献したと評価するためです。

専業主婦(夫)の場合でも、家庭を維持し、配偶者が仕事に専念できる環境を整えた貢献が認められるため、原則として50%の分与を受ける権利があります。

分与割合が修正されるケースもあります。特に、一方の配偶者が特別な才能や努力により、通常の夫婦の協力を超えた貢献をした場合には、その貢献度に応じて分与割合が修正されることがあります。

例えば、医師や弁護士、研究者などの専門職で、その専門性により高額な収入や財産を築いた場合、配偶者の貢献度が相対的に低く評価され、60対40や70対30といった割合になることがあります。

また、会社経営者の場合、配偶者が実質的に経営に参画していたか、単なる内助の功に留まっていたかによって、分与割合が調整されることがあります。

寄与度の立証は実際には困難な場合が多く、明確な証拠がない限り、原則の50対50が適用されることが一般的です。分与割合の修正を主張する場合は、具体的な貢献内容を客観的に証明する必要があります。

4. 具体的な計算例

理論的な説明だけでは理解が困難な部分もあるため、具体的な事例を用いて財産分与の計算プロセスを詳しく見ていきましょう。

ケーススタディ:田中夫妻の場合

田中夫妻は結婚15年、夫(45歳・会社員)、妻(42歳・専業主婦)、子ども2人の家庭です。夫の年収は600万円、結婚前は夫が200万円、妻が100万円の預金を持っていました。

Step1:財産の洗い出し

まず、夫婦名義のすべての財産をリストアップします。

夫名義の財産:

  • 普通預金(給与口座):500万円
  • 定期預金:300万円
  • 自宅(マンション):購入価格2,500万円、現在評価額2,200万円
  • 住宅ローン残高:1,200万円
  • 自動車:現在価値150万円
  • 株式投資:200万円
  • 退職金見込み:1,800万円(勤続20年、婚姻期間15年)

妻名義の財産:

  • 普通預金(家計管理口座):200万円
  • 学資保険解約返戻金:180万円

共有負債:

  • 自動車ローン残高:80万円
  • 教育ローン残高:120万円

Step2:特有財産の除外

結婚前の財産を除外します。

  • 夫の結婚前預金:200万円(特有財産)
  • 妻の結婚前預金:100万円(特有財産)

現在の普通預金から結婚前財産を除外すると:

  • 夫の普通預金(共有分):500万円 – 200万円 = 300万円
  • 妻の普通預金(共有分):200万円 – 100万円 = 100万円

Step3:各財産の評価額算出

共有財産として評価される財産:

  • 夫の普通預金(共有分):300万円
  • 夫の定期預金:300万円
  • 自宅の純資産:2,200万円 – 1,200万円 = 1,000万円
  • 自動車の純資産:150万円 – 80万円 = 70万円
  • 株式:200万円
  • 退職金(婚姻期間対応分):1,800万円 × (15年 ÷ 20年) = 1,350万円
  • 妻の普通預金(共有分):100万円
  • 学資保険解約返戻金:180万円

共有負債:

  • 教育ローン:120万円

Step4:純資産の計算

共有財産の総額: 300万円 + 300万円 + 1,000万円 + 70万円 + 200万円 + 1,350万円 + 100万円 + 180万円 = 3,500万円

純資産:3,500万円 – 120万円 = 3,380万円

Step5:財産分与額の決定

原則的な分与割合(50対50)を適用: 各自の分与額:3,380万円 ÷ 2 = 1,690万円

現在の保有状況:

  • 夫の実質保有額:300万円 + 300万円 + 1,000万円 + 70万円 + 200万円 + 1,350万円 = 3,220万円
  • 妻の実質保有額:100万円 + 180万円 = 280万円

調整が必要な金額:

  • 夫→妻への支払額:3,220万円 – 1,690万円 = 1,530万円

複雑なケースでの計算例

より複雑なケースとして、自営業者の場合を考えてみましょう。

佐藤夫妻の場合:結婚10年、夫(40歳・自営業)、妻(38歳・パート)

夫の事業用資産:

  • 事業用預金:800万円
  • 事業用不動産:1,500万円
  • 事業用車両:300万円
  • 売掛金:200万円
  • 事業用借入:1,000万円

個人資産:

  • 個人預金:400万円
  • 自宅(持分2分の1):1,000万円
  • 個人投資:300万円

妻の資産:

  • 個人預金:150万円
  • 自宅(持分2分の1):1,000万円
  • パート収入での積立:80万円

この場合、事業用資産についても、妻の家庭内での貢献により夫が事業に専念できたという観点から、財産分与の対象として扱われることが一般的です。

事業用資産の純資産: 800万円 + 1,500万円 + 300万円 + 200万円 – 1,000万円 = 1,800万円

個人資産の合計: 400万円 + 1,000万円 + 300万円 + 150万円 + 1,000万円 + 80万円 = 2,930万円

総純資産:1,800万円 + 2,930万円 = 4,730万円

各自の分与額:4,730万円 ÷ 2 = 2,365万円

このような計算を通じて、自営業者の場合でも公平な財産分与が実現できます。

退職金計算の詳細

退職金の計算は特に複雑なため、具体例を用いて詳しく解説します。

山田氏の場合:

  • 現在年齢:50歳
  • 勤続年数:25年
  • 結婚年数:18年
  • 定年退職時の見込み退職金:3,600万円
  • 現時点での自己都合退職金:2,800万円

将来分も含めた計算方法: 定年退職金見込み額 × (婚姻期間 ÷ 定年までの勤続予定期間) = 3,600万円 × (18年 ÷ 35年)= 1,851万円

現在価値での計算方法: 現時点退職金 × (婚姻期間 ÷ 現在の勤続期間) = 2,800万円 × (18年 ÷ 25年)= 2,016万円

裁判所では、より確実性の高い現在価値での計算を採用することが多くなっています。この場合、2,016万円が財産分与の対象となる退職金額となります。

負債の取り扱い

負債についても詳細な検討が必要です。

住宅ローン:夫婦の共同生活のためのローンであり、明確に共有負債となります。不動産評価額から残債を差し引いた純資産で計算します。

自動車ローン:家庭用の自動車購入のためのローンは共有負債です。自動車の現在価値からローン残高を差し引いて純資産を算出します。

教育ローン:子どもの教育費のためのローンは共有負債として扱われます。

カードローン・キャッシング:使途が夫婦の共同生活のためであれば共有負債、個人的な用途(ギャンブル、個人的な趣味など)であれば特有負債として扱われます。

事業用借入:自営業者の事業用借入は、事業用資産とセットで評価し、純資産を算出した上で財産分与の対象とします。

5. 財産分与の割合と考慮要素

財産分与における分与割合の決定は、単純な数式では表せない複雑な要素が関わってきます。原則論から例外的な修正まで、具体的なケースとともに詳しく解説します。

原則50対50の根拠

日本の家庭裁判所では、財産分与の割合について「原則として2分の1ずつ」という立場を取っています。この原則は、夫婦の協力によって財産が形成されたという考え方に基づいています。

この原則の背景には、戦後の家族観の変化があります。かつては「稼ぎ手である夫の貢献が大きい」という考え方もありましたが、現在では「家事労働や育児も経済活動と同等の価値を持つ」という考え方が確立されています。

最高裁判所の判例でも「夫婦の一方が婚姻前から有していた財産や相続により取得した財産等を除き、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産については、原則として各2分の1の割合で分与すべきである」と示されており、この原則が法的にも確立されています。

専業主婦(夫)の貢献評価

専業主婦(夫)の家庭内での貢献をどのように評価するかは、財産分与において重要な論点です。

家事労働の経済的価値について考えてみましょう。内閣府の「男女共同参画白書」によると、家事労働を外部委託した場合の経済的価値は年間約300万円程度と試算されています。これには、清掃、洗濯、料理、買い物などの基本的な家事が含まれます。

育児の経済的価値はさらに高額になります。保育園や学童保育の利用料、ベビーシッターの費用などを考慮すると、年間数百万円の経済的価値があると考えられます。

精神的・社会的支援の価値も見逃せません。配偶者が安心して仕事に専念できる環境を整え、社交関係の維持やキャリア形成をサポートする役割は、金銭には換算できない価値があります。

これらの貢献を総合的に評価した結果、専業主婦(夫)であっても50%の財産分与を受けることが原則となっているのです。

分与割合が修正されるケースの詳細

原則的な50対50の分与割合が修正される場合について、具体的なケースを交えて説明します。

高度な専門性による修正

医師、弁護士、研究者、芸術家などが、その専門的な能力や特殊な才能により高額な収入や財産を築いた場合、配偶者の一般的な貢献を超えた部分については、分与割合が修正されることがあります。

例えば、外科医師が年収2,000万円を得ている場合、その高収入は主に医師としての専門技能に依るものであり、配偶者の家庭内での貢献だけでは説明できない部分があります。この場合、医師の取り分が60~70%程度に修正されることもあります。

事業への直接的貢献による修正

配偶者が夫婦の一方の事業に直接的に関与し、その成功に特別な貢献をした場合には、分与割合が修正されることがあります。

例えば、夫が経営するレストランで、妻が接客や経理を担当し、事業の成功に直接的に貢献した場合、妻の分与割合が60%程度に修正されることもあります。

相続財産の運用による修正

一方が相続で得た財産を夫婦で協力して運用し、大幅に価値を向上させた場合の扱いは複雑です。

例えば、夫が相続で得た1,000万円の現金を、夫婦で協力して不動産投資に活用し、10年後に3,000万円の価値になった場合を考えてみましょう。

元本の1,000万円は夫の特有財産ですが、2,000万円の増加分については夫婦の協力による成果として、財産分与の対象となる可能性があります。ただし、夫の投資判断や専門知識が主たる要因である場合は、夫の取り分が多くなることもあります。

特別な事情による修正

一方の配偶者に特別な事情がある場合にも、分与割合が修正されることがあります。

病気や障害により就労能力が著しく制限される場合、経済的な支援の必要性を考慮して、その配偶者の分与割合が高くなることがあります。

また、子どもの親権を取得する配偶者については、子育てに関わる経済的負担を考慮して、分与割合が若干高く設定される場合もあります。

寄与度認定の実際

実際の家庭裁判所での審理では、寄与度の認定は慎重に行われます。

立証責任:分与割合の修正を主張する側が、その根拠となる事実を立証する責任を負います。単なる主観的な主張ではなく、客観的な証拠が必要です。

証拠の種類:事業への貢献であれば、給与明細、労働契約書、実際の業務内容を示す資料など。専門性による高収入であれば、資格証明書、過去の収入実績、同業他社との比較データなど。

家庭裁判所の判断基準:裁判所は、夫婦の具体的な生活実態、財産形成への各自の貢献内容、社会的・経済的事情などを総合的に考慮して判断します。

実際には、明確な修正事由が認められる場合でも、分与割合の修正幅は10~20%程度に留まることが多く、60対40や70対30といった大幅な修正は例外的なケースに限られます。

6. 財産分与の注意点

財産分与を進める上で注意すべき点は多岐にわたります。これらの点を理解していないと、思わぬ不利益を被ったり、後になって問題が生じたりする可能性があります。

隠し財産の問題と対策

離婚手続きにおいて最も深刻な問題の一つが隠し財産です。一方の配偶者が意図的に財産を隠蔽し、財産分与から除外しようとするケースは決して珍しくありません。

隠し財産の典型的な手口

最も一般的なのは、別名義の口座への資金移動です。離婚を意識し始めた時点で、自分名義以外の口座(親族名義、架空名義など)に資金を移し、財産を隠蔽するケースがあります。

事業者の場合は、売上の一部を現金で受け取り、帳簿に記載しないことで隠し財産を作ることもあります。また、意図的に設備投資や経費を増やして、手元資金を減らして見せかけることもあります。

有価証券については、離婚前に一時的に売却して現金化し、その現金を隠匿するパターンもあります。また、仮想通貨のように追跡が困難な形で資産を保有するケースも増えています。

隠し財産の発見方法

配偶者の隠し財産を発見するためには、いくつかの調査方法があります。

まず、過去数年分の家計収支と照合して、収入に見合わない支出や不自然な資金移動がないかを確認します。給与明細と預金口座の入金額に乖離がある場合は、他の口座への移動を疑う必要があります。

郵便物の確認も有効な手段です。銀行や証券会社からの取引通知書、税務署からの納税通知書などから、隠された口座や取引の存在が判明することがあります。

法的な財産開示請求

調停や審判において、家庭裁判所に財産開示を申し立てることができます。この手続きにより、相手方に対して財産の開示を命じることが可能です。

開示を拒否したり、虚偽の報告をした場合には、過料(罰金)が科せられることもあります。また、弁護士を通じて金融機関に照会することで、口座の存在や残高を確認できる場合もあります。

税務署への照会により、確定申告書の内容から隠された収入や財産の存在が判明することもあります。ただし、これらの手続きには一定の条件や制限があるため、専門家のサポートが不可欠です。

退職金と年金分割の特殊性

退職金と年金分割については、一般的な財産とは異なる特殊な扱いがなされるため、注意深い検討が必要です。

退職金の時期的な問題

退職金は、実際に退職するまで支給されない将来の給付です。離婚時点で退職金をどのように評価し、分与するかは複雑な問題です。

退職金の支給時期が離婚から数年後の場合、その時点で改めて分与を実行するのか、離婚時に現在価値で一括清算するのかを決める必要があります。

一括清算の場合は、将来の不確実性(会社の倒産、制度変更、懲戒解雇などのリスク)を考慮して、一定の減額をすることもあります。

年金分割制度との関係

厚生年金については、平成19年4月以降、年金分割制度が利用できるようになりました。これにより、婚姻期間中の厚生年金保険料の納付実績を分割することができます。

年金分割は財産分与とは別の制度ですが、老後の生活保障という観点では関連性があります。年金分割を行う場合、その分を財産分与から減額するかどうかは、当事者間の協議や家庭裁判所の判断に委ねられます。

企業年金・確定拠出年金

企業年金や確定拠出年金(401k)についても、婚姻期間中に積み立てられた部分は財産分与の対象となります。ただし、これらの制度は複雑で、専門的な計算が必要な場合が多いです。

確定拠出年金の場合、離婚時点での積立金額から、婚姻期間に対応する部分を按分して算出します。ただし、実際の分割手続きには制度上の制約があるため、現金での調整が必要な場合もあります。

税金の問題

財産分与には様々な税金が関わってくるため、事前の検討が必要です。

譲渡所得税

不動産や株式などの財産を分与する場合、譲渡した側に譲渡所得税が課税される可能性があります。

不動産の場合、購入価格より現在価値が高い場合は、その差額に対して譲渡所得税が課税されます。ただし、居住用不動産については3,000万円の特別控除があり、多くのケースで課税されずに済みます。

株式の場合も、購入価格と分与時価額の差額が譲渡所得となります。ただし、夫婦間の財産分与は「対価を得ない譲渡」として扱われるため、税務上は特別な計算方法が適用される場合があります。

登録免許税・不動産取得税

不動産の名義変更に伴い、登録免許税(固定資産評価額の2%)が課税されます。また、財産分与を受ける側には不動産取得税(同3%)が課税される場合もありますが、一定の要件を満たせば軽減措置が適用されます。

贈与税の問題

財産分与は贈与ではないため、原則として贈与税は課税されません。ただし、分与額が婚姻期間中に形成された財産の価額や配偶者の協力の程度に比べて過大である場合は、その過大な部分について贈与税が課税される可能性があります。

また、離婚を仮装して贈与税の負担を免れようとしたと認められる場合も、贈与税が課税されることがあります。

請求期限の重要性

財産分与の請求には厳格な時効があります。民法第768条第2項但書により、離婚の日から2年以内に請求しなければ、財産分与請求権は消滅してしまいます。

この期間は除斥期間とされており、時効の中断や停止はありません。つまり、2年を1日でも過ぎてしまえば、どのような理由があっても財産分与を請求することはできなくなります。

協議離婚の場合は、離婚届が受理された日が起算点となります。離婚届の提出と同時に財産分与についても合意しておくか、少なくとも2年以内に調停や審判の申し立てを行う必要があります。

調停離婚・審判離婚の場合は、調停成立日や審判確定日が起算点となります。

裁判離婚の場合は、判決確定日が起算点となります。

この2年という期間は比較的短いため、離婚後は速やかに財産分与について検討を始める必要があります。特に、財産の調査や評価には時間がかかることが多いため、早期の着手が重要です。

財産分与と他の請求権との関係

離婚に伴う金銭的な給付には、財産分与以外にも慰謝料や養育費があります。これらの関係性を正しく理解することが重要です。

財産分与と慰謝料の区別

財産分与は夫婦が協力して築いた財産の清算であり、離婚の原因や過失とは無関係です。一方、慰謝料は離婚の原因となった精神的苦痛に対する損害賠償です。

不倫やDVが離婚原因である場合、財産分与とは別に慰謝料を請求できます。ただし、実際の交渉では、財産分与額の中に慰謝料的要素を含めて一括して解決するケースも多くあります。

財産分与と養育費の関係

養育費は子どもの生活費や教育費を賄うためのものであり、財産分与とは性質が異なります。財産分与を受けたからといって、養育費の請求権がなくなるわけではありません。

ただし、財産分与として多額の資産を取得した場合、養育費の算定において影響を与える可能性があります。取得した資産からの収入や、資産売却による収入が見込まれる場合は、養育費算定の基礎となる収入に加算されることがあります。

扶養的財産分与と養育費の調整

扶養的財産分与は、離婚後の一方配偶者の生活保障を目的としています。養育費とは趣旨が異なりますが、実際の金額算定では相互に影響し合うことがあります。

例えば、子どもの親権者となる元妻の離婚後の生活が経済的に困窮することが予想される場合、清算的財産分与に加えて扶養的財産分与が認められることがありますが、その場合の金額は養育費との重複を避ける形で調整されます。

7. 財産評価の実務的な進め方

財産分与を適切に実行するためには、各種財産の正確な評価が不可欠です。評価方法によって結果が大きく変わることもあるため、実務的な進め方を詳しく解説します。

不動産評価の実務

不動産の評価は財産分与において最も重要でありながら、最も困難な作業の一つです。

複数の評価方法の活用

不動産の価値を正確に把握するためには、複数の評価方法を併用することが推奨されます。

固定資産評価額は最も簡便に取得できる評価額ですが、実際の市場価格とは乖離があることが多いです。一般的に市場価格の70~80%程度の水準に設定されているため、参考値として位置づけるべきです。

路線価による評価は、相続税や贈与税の計算で用いられる方法で、国税庁が毎年発表しています。市場価格の80%程度の水準とされており、固定資産評価額よりは実勢に近い評価となります。

不動産業者による査定

より実勢に近い評価を得るためには、複数の不動産業者による査定を取得することが有効です。最低でも3社以上から査定を取得し、その平均値を参考価格とすることが推奨されます。

査定を依頼する際は、離婚による財産分与が目的であることを明示し、客観的で保守的な評価を求めることが重要です。売却を前提とした査定と、評価のみを目的とした査定では、金額に差が生じることもあります。

不動産鑑定士による鑑定

より正確性が求められる場合や、当事者間で評価額について争いがある場合は、不動産鑑定士による正式な鑑定評価を取得することも検討します。

鑑定評価は費用(一般的に30~50万円程度)がかかりますが、裁判所での手続きにおいては最も信頼性の高い評価として扱われます。

株式・有価証券の評価

上場株式の評価

上場株式については、証券取引所での終値を基準とします。ただし、離婚時点の株価が一時的な要因で大きく変動している場合は、一定期間の平均株価を用いることもあります。

株式分割や株式併合があった場合は、それらの影響を調整して計算する必要があります。配当金についても、離婚時点で確定している配当は財産分与の対象となります。

非上場株式の評価

非上場株式の評価は極めて困難で、専門家の助言が不可欠です。会社の財務諸表、類似上場企業との比較、DCF法(割引現在価値法)など、複数の手法を組み合わせて評価します。

中小企業の株式の場合、株式の流動性が低く、実際の売却が困難であることも考慮する必要があります。名目上の評価額と実際に現金化できる金額には大きな差があることも珍しくありません。

生命保険の評価

生命保険の評価では、解約返戻金の有無と金額が重要です。

終身保険・養老保険

積立型の保険では、契約年数に応じて解約返戻金が発生します。保険会社に照会することで、離婚時点での正確な解約返戻金額を確認できます。

ただし、契約から年数が浅い場合や、一時払い保険以外では、支払済み保険料の総額よりも解約返戻金の方が少なくなることが一般的です。

定期保険・医療保険

掛け捨て型の保険では解約返戻金がないか、あっても少額であるため、財産分与の対象とはならないのが通常です。

学資保険

子どものための学資保険についても、夫婦の協力により保険料が支払われている場合は、解約返戻金が財産分与の対象となります。

負債の評価と取り扱い

住宅ローンの残債確認

住宅ローンについては、金融機関から正式な残高証明書を取得します。元本の残高だけでなく、遅延損害金や期限の利益の喪失がある場合は、それらも含めた総額を確認する必要があります。

ボーナス払い併用のローンの場合は、次回のボーナス払い時期と金額も確認します。

連帯保証・連帯債務の問題

住宅ローンで夫婦が連帯債務者や連帯保証人になっている場合、離婚後も法的な責任は継続します。財産分与により不動産の名義が変更されても、ローンの債務者変更には金融機関の同意が必要です。

金融機関が債務者変更に同意しない場合は、ローンの借り換えや物件売却による一括返済を検討する必要があります。

その他の借入金

カードローン、教育ローン、自動車ローンなどについても、その用途を確認し、共有負債か特有負債かを判断します。家族のための借入は共有負債として財産分与で考慮しますが、個人的な借入(ギャンブル、個人的な投資の失敗など)は特有負債として除外します。

8. 具体的な計算プロセス

実際の財産分与計算を、ステップバイステップで詳しく見ていきましょう。

計算書の作成

財産調査表の作成

まず、夫婦のすべての財産と負債を一覧表にまとめます。

【夫名義の財産】

預貯金:

– A銀行普通預金:500万円

– A銀行定期預金:300万円

– ゆうちょ銀行:100万円

不動産:

– 自宅マンション:評価額2,200万円

– 住宅ローン残高:△1,200万円

– 純資産:1,000万円

動産:

– 普通乗用車:150万円

– 自動車ローン:△80万円

– 純資産:70万円

有価証券:

– 株式投資:200万円

保険:

– 生命保険解約返戻金:250万円

退職金:

– 支給見込み額:1,800万円

– 婚姻期間対応分:1,350万円

【妻名義の財産】

預貯金:

– B銀行普通預金:200万円

保険:

– 学資保険解約返戻金:180万円

【共有負債】

– 教育ローン:120万円

純資産の算出

共有財産合計: 500万円 + 300万円 + 100万円 + 1,000万円 + 70万円 + 200万円 + 250万円 + 1,350万円 + 200万円 + 180万円 = 4,150万円

共有負債合計:120万円

純資産:4,150万円 – 120万円 = 4,030万円

分与額の計算

原則的分与割合(50%)を適用: 各自の分与額:4,030万円 ÷ 2 = 2,015万円

現物分与と金銭調整

計算された分与額を実際に配分する方法には、現物分与と金銭調整があります。

現物分与の考え方

可能な限り、現物での分与を行い、金銭での調整を最小限に抑えることが望ましいとされています。

上記の例では:

  • 夫の取得財産:自宅(純資産1,000万円)+ 自動車(70万円)+ 株式(200万円)+ 退職金(1,350万円)+ 生命保険(250万円)= 2,870万円
  • 妻の取得財産:預貯金の一部 + 学資保険(180万円)= ?万円

夫の超過額:2,870万円 – 2,015万円 = 855万円

この超過分を金銭で妻に支払うことで調整します。

現実的な分与方法の検討

実際には、すべてを計算通りに分与することは困難な場合が多いため、現実的な方法を検討する必要があります。

例えば、自宅については夫が継続して居住し、その代わりに妻には相当額の金銭を支払うという方法があります。または、自宅を売却して現金化し、その売却代金を分与するという方法もあります。

退職金については、実際の支給時期が遠い将来である場合、現在価値に割り引いて一括で清算する方法と、実際の支給時に分与を実行する方法があります。

分与方法の決定要因

どのような分与方法を選択するかは、以下の要因を考慮して決定します。

資金調達能力:金銭での調整を行う場合、支払う側に十分な資金調達能力があるかを確認する必要があります。住宅ローンの借り換えによる資金調達や、不動産の売却による現金化などの可能性を検討します。

税務上の影響:現物分与と金銭分与では税務上の扱いが異なる場合があります。特に不動産の分与では、譲渡所得税の問題を事前に検討する必要があります。

将来の生活設計:各自の離婚後の生活設計を考慮して、どのような財産を取得することが適切かを判断します。子どもの親権者となる場合は、住居の確保や教育資金の準備が重要になります。

9. トラブル防止のための実践的アドバイス

財産分与をスムーズに進め、将来のトラブルを防止するための実践的なアドバイスをご紹介します。

財産調査の徹底

書類の収集と保全

財産分与の協議を始める前に、必要な書類をすべて収集し、コピーを保管しておきます。

金融機関関係:通帳、キャッシュカード、取引明細書、残高証明書 不動産関係:登記簿謄本、固定資産税納税通知書、住宅ローンの契約書と残高証明書 投資関係:証券会社の取引残高報告書、運用報告書 保険関係:保険証券、保険料領収証、解約返戻金試算書 退職金関係:就業規則、退職金規程、勤務証明書 税務関係:確定申告書、源泉徴収票、住民税決定通知書

隠し財産への対策

配偶者による隠し財産を防止するため、早期の段階で財産の現状を把握しておくことが重要です。

定期的に家計全体の収支状況を確認し、収入と支出、貯蓄のバランスを把握しておきます。異常な支出や不自然な資金移動があった場合は、その理由を確認します。

郵便物や電子メールで送付される金融機関からの通知書類にも注意を払い、知らない口座や取引の存在がないかを確認します。

専門家の活用

財産分与の計算は複雑な場合が多く、適切な専門家のサポートを受けることが重要です。

弁護士の役割

財産分与に関する法的な問題については、家事事件に精通した弁護士に相談することが推奨されます。弁護士は以下のような支援を提供します:

法的権利の説明と戦略立案、相手方との交渉代理、調停・審判手続きの代理、財産開示請求などの法的手続き、隠し財産の調査方法のアドバイス。

特に高額な財産がある場合や、事業用資産が関わる場合、相手方が協力的でない場合などでは、弁護士のサポートが不可欠です。

税理士・会計士の活用

税務上の問題が関わる場合や、事業所得の評価が必要な場合は、税理士や公認会計士の専門的助言が重要です。

特に以下のような場合は専門家に相談すべきです:

  • 個人事業主や法人経営者の財産分与
  • 複雑な投資ポートフォリオの評価
  • 税務上の優遇措置の活用検討
  • 分与後の税務申告への影響

不動産鑑定士・その他専門家

不動産の正確な評価が必要な場合は不動産鑑定士に、美術品や骨董品などの特殊な財産がある場合は専門の鑑定士に依頼します。

合意書面の作成

財産分与について当事者間で合意に達した場合は、必ず書面で合意内容を明確にしておくことが重要です。

協議書の記載事項

財産分与に関する協議書には、以下の事項を明記します:

分与対象財産の具体的リスト、各財産の評価額、分与割合と各自の取得財産、金銭での調整額と支払方法、支払期限と遅延損害金、名義変更等の手続き分担、将来判明した財産の取り扱い。

公正証書の活用

特に金銭での調整が大きい場合は、公証役場で公正証書を作成することを強く推奨します。公正証書にしておけば、支払いが滞った場合に強制執行が可能になります。

公正証書作成の際は、「債務者が金銭の支払を怠ったときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した」との執行受諾文言を必ず記載します。

名義変更手続きの実務

不動産の名義変更

不動産の名義変更(所有権移転登記)は司法書士に依頼することが一般的です。必要書類は以下の通りです:

登記原因証明情報(離婚協議書、調停調書等)、登記識別情報(権利証)、印鑑証明書、住民票、固定資産評価証明書。

登録免許税として固定資産評価額の2%が必要です。また、司法書士報酬も10~20万円程度必要です。

自動車の名義変更

自動車の名義変更は陸運局で行います。必要書類:

車検証、自動車損害賠償責任保険証明書、新旧所有者の印鑑証明書、譲渡証明書、委任状、車庫証明書。

預金口座の取り扱い

預金口座については、口座名義人が継続して使用するか、解約して現金化するかを決めます。名義変更は一般的に金融機関では受け付けていないため、実質的には解約・新規開設となります。

10. よくあるトラブルと対処法

財産分与において実際に発生しがちなトラブルと、その対処法について解説します。

財産評価をめぐる争い

不動産評価額の争い

夫婦それぞれが異なる不動産業者に査定を依頼し、大きく異なる評価額が提示される場合があります。このような場合の対処法:

複数の査定を取得し、極端に高い・低い査定は除外して平均値を求める、不動産鑑定士による正式な鑑定を実施する、近隣の類似物件の成約事例を調査する。

事業用資産の評価争い

自営業者の事業用資産について、その評価方法や分与割合で争いになることがあります:

事業の実態と配偶者の貢献度を客観的に分析する、同業他社との比較分析を実施する、会計士による財務分析を依頼する。

支払い能力の問題

分与額が高額で支払い困難

計算された分与額が高額で、一括での支払いが困難な場合:

不動産の売却による現金化を検討する、分割払いの条件を協議する(利息・担保の設定を含む)、現物分与の割合を調整する。

担保・保証の設定

高額な分割払いの場合は、支払いの確実性を担保するための措置を講じます:

連帯保証人の設定、不動産への抵当権設定、生命保険金の受取人指定、預金口座の差押え同意。

離婚後の財産発見

隠されていた財産の発見

離婚後に相手方の隠し財産が判明した場合:

離婚から2年以内であれば、追加の財産分与を請求可能、証拠を収集して調停・審判を申し立て、悪質な隠匿の場合は慰謝料請求も検討。

相続等による新たな財産取得

離婚後に元配偶者が相続等で多額の財産を取得した場合、原則として追加の財産分与は請求できません。ただし、離婚前から予想されていた相続が意図的に離婚後まで延期された場合などは、特別な考慮がされることもあります。

11. 国際結婚・海外財産がある場合の特殊事情

国際結婚の場合や海外に財産がある場合は、追加的な考慮が必要です。

準拠法の問題

国際結婚の場合、どの国の法律に従って財産分与を行うかという準拠法の問題があります。日本の裁判所では、夫婦の本国法や常居所地法など、複数の要因を考慮して準拠法を決定します。

海外財産の評価

海外にある不動産や預金については、現地の法制度や税制を理解した上で評価する必要があります。為替レートの変動リスクも考慮した評価が必要です。

執行の問題

海外財産に対する日本の裁判所の判決の執行は、相手国での承認・執行手続きが必要となり、非常に複雑です。このような場合は、国際的な家事事件に精通した専門家のサポートが不可欠です。

12. 財産分与と相続対策

財産分与は将来の相続にも影響を与えるため、長期的な視点での検討が重要です。

子どもへの影響

財産分与により親の財産構成が変化することで、将来の相続において子どもが受け取る遺産にも影響が生じます。

特に再婚により新たな相続人が加わる可能性がある場合は、子どもの将来的な利益も考慮した財産分与を検討する必要があります。

税務上の最適化

財産分与の方法により、将来の相続税負担も変化します。不動産を誰が取得するか、金融資産をどのように分配するかによって、将来の税負担が変わってくるため、税理士と相談しながら最適な分与方法を検討することが重要です。

まとめ

財産分与は、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を公平に分配するための重要な制度です。正確な計算のためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

財産分与の基本原則を理解する:共有財産の50対50での分与が原則。特有財産は分与対象外。配偶者の貢献度は平等に評価。

正確な財産調査を実施する:すべての資産と負債を漏れなく調査。複数の方法で財産価値を評価。隠し財産の発見に努める。

適切な計算プロセスを踏む:財産の洗い出し→評価→純資産算出→分与割合決定。現実的な分与方法を検討。

法的・税務的な注意点を考慮する:2年の請求期限を厳守。税務上の影響を事前に検討。必要に応じて専門家に相談。

将来のトラブル防止を図る:合意内容を書面で明確化。公正証書の活用を検討。名義変更等の手続きを確実に実行。

財産分与は離婚手続きの中でも特に複雑な部分であり、当事者だけで適切に処理することは困難な場合が多いです。不安がある場合や高額な財産が関わる場合は、早期に弁護士や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

適切な財産分与により、離婚後の新しい生活を安定した基盤の上でスタートすることができます。十分な準備と正しい知識に基づいて、公平で納得のいく財産分与を実現しましょう。

佐々木裕介

佐々木 裕介(弁護士・行政書士)

「失敗しない子連れ離婚」をテーマに各種メディア、SNS等で発信している現役弁護士。離婚の相談件数は年間200件超。協議離婚や調停離婚、養育費回収など、離婚に関する総合的な法律サービスを提供するチャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所を運営。

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