離婚前の別居で気になる住民票の問題。
別居の段階で、住民票は移しておくべきなのでしょうか?
離婚に向けた別居において、住民票を移すメリットデメリットについてお伝えします。
そもそも住民票とは?
住民票は、日本の住民登録制度に関連するものです。
住民票は、特定の地域(市町村)に住んでいる人々の基本的な個人情報をまとめた公的な文書です。
住民票には、以下の情報が含まれていることが一般的です。
- 氏名:本名や通称名などの情報
- 生年月日:本人の誕生日が記載
- 性別:男性か女性かが記載
- 住所:現在の住所が記載
- 戸籍情報:出生地や戸籍に関する情報が含まれる。
- 世帯主情報:世帯主となる人の情報が含まれる。
住民票は、市町村役場などの地方自治体で管理されており、個人の住民情報を正確に記録し、社会サービスや行政手続きなどの基盤として活用されています。
住民票の変更(引っ越しや転入など)や発行、証明書類の取得などは、通常は該当する市町村役場で手続きを行います。
離婚を決めたとき、住民票は移しておくべき?
離婚を前提に別居するとき、住民票を移すメリットとデメリットが存在します。
どちらも理解した上で慎重に行動しましょう。
住民票を移動させた方が良い場合
離婚の意志が確固としており、「復縁はない」と決意している場合は、住民票を移動させることが望ましいでしょう。
住民票を転出していれば、公的書類や自分宛ての郵便物が自分の手元に届くため、住民票を移動させるメリットがお大きいでしょう。
住民票を移動させなくて良い場合
一時的な別居に留まる場合は、住民票を移動させなくても問題ありません。
例えば、夫婦の一方が単身赴任で一時的に家を離れるケースなどが典型的な例です。
夫婦の関係が一時的に悪化して冷却期間を置くために別居する場合も、このケースに該当します。
住民票を移動させると離婚が認められやすくなる
別居時に住民票を新しい住所に移動させると、住民票の移動履歴が別居中であることや別居期間を示す証拠として利用される可能性があります。
そのため、住民票を移動させて一定期間が経過すると、調停や裁判で離婚が認められやすくなるでしょう。明確な民法上の離婚原因がない場合でも、多くの場合、別居期間が3年継続されると裁判所としても離婚を認めやすくなると言われています。住民票の移動は、別居期間が継続していることの証拠としても活用できます。
住民票を移動させるタイミングは?
住民票の移動は、別居後できるだけ早めに行うことが望ましいです。
早めに転出届を提出して住民票を新しい住所に移すことで、役所での手続きや金融機関などでの住所変更がスムーズに進み、新しい生活環境を整える際に役立ちます。
近年は電子申請サービスを利用して窓口に行かずに転出届を出すことも可能ですので、そうしたサービスの利用も検討してください。
別居するときに住民票を移すメリットとは?
別居する際に住民票を移すことには、以下のようなメリットがあります。
別居状態の証明となる
住民票を旧居住地から新居住地に移動することで、別居状態を客観的に証明することができます。
別居が長期間続いていれば、夫婦の協力関係の喪失が証明され、離婚の成立が容易になりえます。
転入先で児童手当を受給できる
児童手当の受給者は、通常は子どもの父親である夫の名義となっています。
しかし、子どもと共に住民票を新居住地に移すことで、自身が受給者となり、子どもの児童手当(自治体によっては乳幼児養育手当も)を受け取ることができます。
ただし、受給者を変更する場合は、離婚協議中あるいは離婚調停中であることを示す証明書を提出する必要があることに注意してください。別居後に、婚姻費用(生活費)の請求調停や離婚調停の申立てを忘れないようにしましょう。
学校や保育施設への編入が容易になる
高校生以下の子どもを連れて別居する場合、住民票を新居住地に移動させないと、新居住地の学校や保育施設への編入ができません。
学校や保育施設に事情を説明すれば理解してもらえることもありますが、住民票を移さないままでは転入先の学校などへの通学が困難になる可能性があります。
公営住宅の申し込みが可能になる場合がある
別居や離婚により、一定の条件を満たす場合、公営住宅の申し込み対象となる可能性があります。
各地方自治体に問い合わせてみてください。
別居するときに住民票を移すデメリットとは?
別居する際に住民票を移すことには、以下のようなデメリットがあります。
子どもの転校・転園が必要になる
元々住んでいた地域から住民票を移動させると、通っていた学校や保育園・幼稚園に通うことが原則的にできなくなります。
特に、学校の校区は厳格に定められており、校区外に引っ越すと子どもを転校させなければならないことになります。
同じ学校に通わせたい場合は、学校とよく相談する必要があります。
DV夫に居場所が知られてしまう可能性
夫婦は結婚すると同じ戸籍に記載されるため、片方がこっそりと住民票を他の場所に移しても、相手にはすぐに知られてしまいます。
配偶者は役所に照会することで、戸籍の附票や住民票(除籍票)を閲覧できるためです。DV被害者が居場所を秘密にしたい場合は、住民票の移動には慎重に対処する必要があります。
配偶者による移動先住所の特定を防止したい場合、住民票の閲覧制限を利用しましょう。閲覧制限とは、家庭内暴力(DV)や、ストーカー行為、児童虐待などが行われているときに、加害者が被害者の住所を知ることを防止するために、住民票などの交付や閲覧を制限する制度のことです。
自営業の場合は国民健康保険料の支払いが生じる
夫が勤め先の健康保険に加入していて、妻が扶養に入っている場合、別居しても妻は夫の被扶養者です。
しかし夫婦ともに自営業などで国民年金の被保険者の場合は、妻は自分で国民健康保険に加入して保険を支払う必要があります。
別居のために住民票を移す前に知っておきたいポイント
別居する際に住民票を移す前に、以下のポイントを知っておくことが重要です。
DV被害を受けている場合は「DV等支援措置」を利用する
DVを受けている場合、住民票を隠したいときには「DV等支援措置」を利用することができます。
DV等支援措置は、被害者の住所を知ろうとする加害者から被害者を守るための制度です。
必要な場合は、地域の警察署や配偶者暴力支援センターに相談し、住民票の提出を制限する申出書を提出することができます。警察署に行く際には、事前に「DV相談」であることを連絡しておきましょう。
共有財産を写真に撮っておく
別居の際は、個人の所持品や財産を持ち出すことになります。
重要な財産や貴重品は、家を出る前に写真を撮って記録しておくことが重要です。
財産分与を行う際に相手が勝手に処分することを防ぎ、公正な財産分配を確保するためにも、写真の保存は役立ちます。
別居や離婚手続きは弁護士に相談すべき?
別居や離婚手続きを弁護士に相談することには、以下のようなメリットがあります。
別居する最適なタイミングがわかる
別居を決める際には様々な準備が必要ですが、配偶者から暴力やモラハラを受けている場合は即座に別居した方が安全な場合もあります。
弁護士に相談することで、状況に応じた別居の最適なタイミングについてアドバイスを受けることができます。
相手に一度も会わずに離婚手続きを進められる
弁護士を介して離婚手続きを進めることで、相手に一度も会わずに離を成立させることができる可能性があります。
弁護士が交渉を担当するため、感情的な対立を避け、冷静に離婚に向けて話し合うことができるでしょう。
婚姻費用や財産分与、養育費の請求ができる
別居している場合でも、離婚が成立するまで、収入の多い方から収入の少ない方への婚姻費用の請求が可能です。
また、共有財産の適切な分割や子どもの養育費についても、弁護士のサポートを受けることで公正な取り決めが可能となります。
離婚にあたり有利な条件を引き出すことができる
弁護士のサポートを受けることで、交渉を有利な条件で進め、自身にとって有利な条件を引き出すことができます。
例えば、持ち家に住み続けることや、財産分与や養育費、慰謝料の金額を最大限に得ることができるでしょう。
弁護士の助けを借りることで、公平な離婚手続きを行うことができます。
まとめ
別居に向けた準備は時間と努力を要します。
小さな子どもがいる場合は、なおさら負担が大きくなります。
具体的な状況をよく理解し、必要な情報を得るためにも専門家や弁護士と相談することがおすすめです。
離婚における権利や責任を理解し、円満な別居を進めるためにも冷静な判断が求められます。