養育費の強制執行とはどんな手続き?養育費の支払いが止まったら自分で強制執行できる?

養育費が支払われない時は、財産分与や慰謝料の場合と同様に、まずは自分で催促し、それでも支払われない時には法的手段をとります。

強制執行の流れや手続きを確認しておきましょう。

目次

養育費の負担義務

離婚した場合は、子どもと別居している親が同居している親に養育費を支払うことになります。

養育費とは、子どもを育てるために必要な費用のことで、子供の生活費や教育費など、子育てに関する費用のすべてが含まれます。

親権を取らなかったとしても、養育費の分担を拒否することはできません。

実際には、母親が親権を持って同居することが圧倒的に多いので、その場合は父親が支払うことになります。

子どものために必ず受け取る

子どもには養育費を受け取る権利があります。

養育費は子どもの成長になくてはならないお金です。

子どものためにしっかり取り決めをして、それぞれが支払いと受け取りを確実に行うようにしましょう。

養育費の支払い状況

厚生労働省が公表している「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によれば、母子家庭のうち養育費を受けている世帯の割合は、28.1%にすぎません。

書面を交わしていても、支払われていない現状があります。

そこで今回は、「養育費の強制執行」について知っておきましょう。

強制執行とは

「強制執行」とは、相手方が支払いや建物の引き渡しを拒否した場合に、判決などで債務を認められた債権者が申し立てることで、裁判所が債務者に対する請求権を強制的に実現する手続きのことです。

たとえば、相手方が養育費を支払わない場合、その未払い分を相手方の預金や給料から差し押さえて回収することができるかもしれません。

「差し押さえ」をするためには条件がある

離婚に際して養育費の支払いの約束をしたからといって、必ずしも強制執行(差押え)が行えるわけではありません。

差押えを実行するためには、以下の条件を満たす必要があります。

公正証書、調停調書などの「債務名義」がある

公正証書や調停調書などの書類によって「債務名義」が確立されている場合、具体的には以下の条件が必要です。

  1. 強制執行認諾条項を含む公正証書
  2. 調停調書
  3. 審判書
  4. 判決書
  5. 和解調書

ただし、口頭での合意による約束や単に当事者間で合意して署名・押印した合意書の場合、書面による確認がないため、これらの書類が存在しない場合は、強制執行が行われることはありません。これらの場合、まずは養育費請求の調停を申し立てることになります。

支払期限を過ぎても支払われていない

強制執行を行うためには、原則として「支払時期を過ぎている」ことが必要です。

つまり、養育費が予定された支払い期限を過ぎても支払われていない状態である必要があります。

一度も養育費が滞納されていない場合には、差押えを行うことはできません。

ただし、養育費に関しては「将来分の差押え」が認められているケースもあります。

過去の養育費の滞納が原因で相手方の給料を差し押さえると、将来の養育費についてもその後の給料やボーナスから差し引かれて支払われるようにすることが可能です。

相手方が資産や債権を持っている必要がある

強制執行を行うためには、相手方が差し押さえ対象となる資産や債権を持っていることが必要です。

差し押さえの対象となる代表的な資産や債権は以下です。

  • 現金
  • 預貯金
  • 不動産
  • 車両
  • 株式
  • 投資信託
  • 給与・ボーナス
  • 退職金

給与と預貯金債権の差し押さえとは

養育費の強制執行において、特に給与と預貯金債権が差し押さえの対象になることが多いです。

それぞれについて詳細を把握しておきましょう。

給与の差し押さえ

給与の差し押さえとは、相手方が勤務先から受け取る給与を、債権者(養育費の場合は受け取る側)に直接支払う手続きを指します。

給与の差し押さえが実行されると、裁判所から会社に通知が行き、会社は一定の割合の給与を債権者に支払う義務が発生します。

ただし、給与の差し押さえには上限額が設定されており、全額を差し押さえることはできません。

養育費の場合、差し押さえの上限額は以下の通りです。

  • 手取り額(給料から税金や社会保険料を差し引いた額)の2分の1
  • 手取り額が66万円を超える場合、手取り額から33万円を差し引いた金額

なお、相手方は養育費の滞納を勤務先に知られることを避けたいと思うことがあります。

そのため、給与の差し押さえ手続きを実行する前に、相手方に対して「これ以上の滞納が続く場合、差し押さえ手続きを行うことになる」という旨を通知することで、自主的に滞納分が支払われる可能性もあります。

預貯金の差押え

預貯金の差し押えは、相手方の預貯金から養育費の滞納分を回収する手続きを指します。

この手続きでは、裁判所が金融機関に差押命令を出し、それに基づいて債権者が支払いを受けることが可能です。

ただし、預貯金の差し押えを行うためには、相手方がどの金融機関に預金口座を持っているかを特定する必要があります。

また、口座に残高が少ない場合には、希望する金額を回収することが難しい場合もあります。

このため、事前に相手方の預金口座情報を調査することが重要です。

相手方の預金口座がどの金融機関にあるか分からない場合でも、弁護士を通じて「弁護士会照会」の手続きを行うことで、預金口座情報を入手することが可能です。

また、養育費の支払いが滞った場合に強制執行の準備段階として利用できる「財産開示手続き」もあります。

この手続きでは、裁判所が債務者に対して保有する財産の状況を報告させることができます。

さらに、2020年の改正民事執行法では、「第三者からの情報取得手続き」を通じて債務者の財産情報を取得することも可能となりました。

強制執行の流れとは

強制執行に必要な書類や全体の流れを確認しておきましょう。

強制執行に必要な書類

強制執行を行うためには、以下の書類が原則として必要です。

申立書

強制執行を申し立てる際に提出する書類です。

当事者目録や請求債権目録、差押債権目録、物件目録などが含まれることがあります。

申立書の書式は、各地の裁判所のウェブサイトに掲載されている場合もあります。

債務名義の正本

強制執行の根拠となる文書です。

養育費の場合、調停調書、審判書、和解調書、判決書、公正証書が債務名義となります。

執行文

和解調書、判決書、公正証書の場合には、強制執行が許可されることを示す執行文が必要です。

これらの文書を作成した機関(家庭裁判所や公証人役場など)に執行文の付与を申請する必要があります。

送達証明書

債務名義の正本などが債務者(養育費の支払い義務者)に送達されたことを証明する書類です。

これは、債務名義を発行した機関から取得します。

他にも、差し押さえる財産によっては追加で必要な書類があるかもしれないため、申立てを行う裁判所に確認しましょう。

養育費の強制執行の流れ

養育費の強制執行を行う際の一般的な流れは以下の通りです。

ただし、個別のケースによって手続きが異なる場合もあるため、裁判所や弁護士に相談することをおすすめします。

養育費の強制執行を行う際の一般的な流れは以下の通りです。

  1. 準備段階の手続き:
    • 財産開示手続: 債務者に対して保有する財産の状況を報告させる手続きです。財産開示手続きを通じて、債務者の資産や所得状況を把握します。
  2. 申立書の提出:
    • 強制執行を申し立てるための申立書を裁判所に提出します。申立書には、当事者目録、請求債権目録、差押債権目録、物件目録などが含まれることがあります。
  3. 債務名義の正本の提出:
    • 養育費に関する調停調書、審判書、和解調書、判決書、公正証書などを提出します。これが債務の根拠となります。
  4. 執行文の申請:
    • 和解調書、判決書、公正証書の場合には、執行文を発行するための申請を行います。
  5. 送達証明書の取得:
    • 債務名義の正本などが債務者に送達されたことを証明するため、送達証明書を取得します。
  6. 差押え命令の発行:
    • 裁判所は差押え命令を発行し、金融機関に通知します。差押え命令に基づいて、金融機関は債務者の預金を一部差し押さえ、債権者に支払います。
  7. 差押え実行:
    • 金融機関が差押えを実行し、債務者の預金から養育費の滞納分を引き落とします。
  8. 支払い通知:
    • 債権者は差押えによって回収された金額を確認し、債務者に通知します。

上記の手続きを通じて、養育費の強制執行が行われます。

強制執行にかかる費用

強制執行にかかる費用は、申立手続きや実際の執行に関連する様々な要因によって異なります。

以下に一般的な費用の例を挙げてみます。

ただし、具体的な費用は地域や個々のケースによって異なる場合がありますので、参考程度にしてください。

申立手続き関連費用

  • 申立手続きの際に提出する書類の作成費用
  • 証紙代や印紙代
  • 裁判所に提出する際の手数料

執行手続き関連費用

  • 執行手続きの際に必要な書類の発行費用(例:執行文の発行手数料)
  • 送達手続きに伴う費用(送達証明書の取得など)

差押え手続き関連費用

  • 差押え命令の発行手数料
  • 差押え実行時の手数料

専門家の費用

  • 弁護士や司法書士の相談料や手続き代行料
  • 強制執行のプロセスを支援する専門家の費用

その他の費用

  • 交通費や通信費(手続きに関する面談や連絡のため)
  • 税金や手数料(執行された金額に対する税金や手数料)

これらの費用は、申立手続きから執行までのプロセスに関わるものであり、全てのケースで必要なわけではありません。

費用の詳細や合計額は、実際のケースや地域によって異なるため、弁護士や専門家に相談して具体的な見積もりを取得することが重要です。

また、支払われた養育費の一部を債務者に返済させることもあるため、その点も考慮して計画を立てましょう。

強制執行しても養育費をもらえない場合

強制執行をしても養育費を回収できない場合とその際に考えられる対処法について知っておきましょう。

債務者の資産が不足している場合

債務者の資産が差し押えによって回収できるほど充分でない場合、完全な回収は難しいでしょう。

この場合、債務者の収入状況を調査し、将来の支払い計画を立てることが考えられます。

債務者の所在が不明の場合

務者の居住地や勤務先が分からない場合、強制執行を進めることができません。

私立探偵を雇ったり、公的な情報機関からの情報取得を試みたりすることで、所在を特定する手段が考えられます。

債務者が収入を得ていない場合

債務者が失業中であったり、収入を得ていない場合、差押えによる回収が難しいことがあります。

この場合、再就職のサポートや就労機会の提供を検討し、債務者の収入源を確保することが対策となるかもしれません。

務者が逃亡した場合

債務者が逃亡している場合、その行方を追うことは難しいです。

ただし、専門家による捜索や公的な機関の協力を得ることで対処できるかもしれません。

債務者が回収手続きを妨害する場合

債務者が意図的に回収手続きを妨害する場合、裁判所に対して強制執行の適用を申請したり、法的な措置を講じることが考えられます。

まとめ

養育費の支払いは親としての義務であり、子どもの権利を保護するために重要です。

不払いの状況が生じた場合、適切な対応が求められます。

しかし、強制執行は複雑な手続きであり、自身で行う際には広範な法的知識と手続きの理解が必要です。

そのため、公正証書を作成しても、それを元に強制執行手続きを進めるには、弁護士費用などの費用がかかります。

また、誤った方法で対処した結果、逆に問題を複雑化させてしまう可能性もあるため、泣き寝入りするしかない場合も多いことが現状です。

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