1. 導入:なぜ第三者の立会いが必要になるのか
離婚後の面会交流は、子どもの健やかな成長と親子関係の維持にとって重要な制度です。しかし、すべての面会交流が円滑に実施できるわけではありません。元夫婦間の関係悪化、過去のトラブル、子どもの不安など、様々な要因により面会交流自体が困難になったり、実施されてもトラブルが発生したりするケースが少なくありません。
こうした状況において、第三者の立会いという制度が重要な役割を果たします。第三者の立会いとは、面会交流の際に中立的な立場の人が同席し、面会交流の実施を支援したり監督したりすることです。これにより、安全で安心な面会交流の実現が期待できるのです。
立会いが子どもや親の安心につながる理由は複数あります。まず、第三者がいることで感情的なトラブルの発生を抑制できます。また、子どもにとっては「何かあっても大丈夫」という安心感を得られ、のびのびと親との時間を過ごすことができます。同居親にとっても、面会交流中の子どもの安全が確保されているという安心感を得られます。一方、非同居親にとっても、後から「こんなことがあった」と言われるリスクを回避できるというメリットがあります。
本記事では、面会交流における第三者立会いの必要性から具体的な方法、そして気になる費用面まで、立会いの仕組みと実際の利用法について詳しく解説していきます。面会交流でお困りの方、立会いの利用を検討している方にとって、実践的で有用な情報をお届けします。
2. 第三者立会いが検討されるケース
第三者立会いが必要となるケースは、主に安全面や心理面での配慮が必要な場合です。具体的にどのような状況で立会いが検討されるのか、代表的なケースを見ていきましょう。
DVやモラハラなど安全確保が必要な場合
最も深刻なケースとして、過去にドメスティックバイオレンス(DV)やモラルハラスメント(モラハラ)があった場合が挙げられます。身体的暴力だけでなく、精神的な暴力や経済的な支配などがあった場合、同居親と非同居親が直接接触することで再び問題が発生する可能性があります。
このようなケースでは、子どもの受け渡しの際に元配偶者と顔を合わせることすら大きなストレスとなり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状が悪化することもあります。第三者が立会うことで、直接的な接触を避けながら面会交流を実現することが可能になります。
また、非同居親から同居親への暴言や威圧的な態度が予想される場合も、第三者の存在が抑制効果を発揮します。客観的な証人がいることで、不適切な言動を控える心理的効果が期待できるのです。
面会交流の約束が守られない場合
面会交流の取り決めがあるにもかかわらず、約束の時間に遅れる、約束の場所に来ない、面会時間を一方的に延長しようとするなど、ルールを守らない行動が繰り返される場合も立会いが有効です。
特に、子どもを予定通りに返さない、連絡もなく面会をキャンセルする、面会中に子どもを連れ回してしまうなどの行動は、同居親の不安を増大させ、面会交流の継続自体を困難にします。第三者が立会うことで、取り決めたルールの遵守を促し、トラブルの発生を防ぐことができます。
また、面会交流の際に同居親の悪口を子どもに吹き込む、復縁を迫るようなことを言うなど、不適切な言動があった場合も、第三者がいることでこうした行為を抑制できます。
子どもが一人での交流を不安に感じる場合
子どもの年齢や性格、これまでの経験によっては、非同居親と二人きりになることに強い不安を感じることがあります。特に、離婚時に激しい夫婦喧嘩を目撃した子ども、長期間非同居親と会っていなかった子ども、もともと人見知りが強い子どもなどは、面会交流自体にストレスを感じることが多いものです。
このような場合、いきなり二人きりでの面会を強行するよりも、まずは第三者が同席する形で慣れてもらい、徐々に子どもの不安を軽減していくアプローチが効果的です。子どもが「何かあっても助けてもらえる」という安心感を持てれば、自然に非同居親との関係も改善していく可能性があります。
親同士の直接接触を避けたいケース
DVやモラハラほど深刻ではないものの、離婚に至った経緯や離婚後のトラブルなどから、元配偶者と顔を合わせることを避けたいというケースも多くあります。子どもの受け渡しの際に言い争いになってしまう、感情的になってしまうなどの問題が予想される場合です。
このようなケースでは、第三者が仲介役となることで、親同士が直接やり取りすることなく面会交流を実施できます。連絡事項がある場合も第三者を通じて伝達することで、感情的な衝突を避けることができます。
また、新しいパートナーがいる場合や再婚している場合など、複雑な家族関係が背景にある場合も、第三者の立会いが緊張緩和に役立つことがあります。
3. 第三者立会いの種類
第三者立会いには様々な形態があり、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。状況や予算、求める支援のレベルに応じて適切な選択肢を検討することが重要です。
親族や知人による立会い
最も身近で利用しやすいのが、双方の親族や共通の知人による立会いです。特に、離婚前から子どもとも親しく、両親のことも良く知っている祖父母や兄弟姉妹、親しい友人などが立会人となるケースが多く見られます。
このタイプの立会いの最大のメリットは費用がかからないことです。また、子どもにとっても馴染みのある人が同席することで、緊張せずに自然に過ごすことができます。立会人も事情を理解しているため、適切なタイミングでサポートしてくれることが期待できます。
一方で、親族や知人による立会いには限界もあります。どうしても同居親寄り、または非同居親寄りの立場になりがちで、完全に中立的な判断ができない可能性があります。また、専門的な知識がないため、トラブルが発生した際の対応が適切でない場合もあります。
さらに、立会いを頼まれる側の負担も考慮する必要があります。毎回の面会交流に付き合うのは時間的にも精神的にも負担が大きく、長期間継続するのが困難になる可能性もあります。
弁護士や調停委員など専門家の立会い
法律の専門家である弁護士や、家庭裁判所の調停委員などが立会人となるケースもあります。これらの専門家は離婚問題や面会交流について豊富な知識と経験を持っており、トラブルが発生した際も適切に対応することができます。
弁護士が立会う場合、法的な観点から面会交流の実施状況を客観的に記録し、必要に応じて後の調停や審判で証拠として活用することも可能です。また、その場で法的なアドバイスを受けることもでき、面会交流のルール変更が必要な場合などにも対応してもらえます。
調停委員の場合は、家庭裁判所での調停を担当した経験から、両当事者の事情を理解しており、中立的な立場で面会交流を見守ることができます。子どもの心理面についても一定の知識を持っているため、子どもの様子を見ながら適切な助言をしてくれることが期待できます。
ただし、専門家による立会いは費用が高額になることが最大のデメリットです。弁護士の場合、1回あたり数万円から10万円程度の費用がかかることもあり、継続的な利用は経済的負担が大きくなります。
面会交流支援センターなど公的機関の立会い
最近増えているのが、面会交流支援センターなどの公的機関や民間の支援団体による立会いサービスです。これらの機関は面会交流の専門的なサポートを目的として設立されており、研修を受けたスタッフが立会いを担当します。
面会交流支援センターの特徴は、専門性と中立性を兼ね備えていることです。スタッフは面会交流に関する専門的な研修を受けており、子どもの心理や親子関係について理解を深めています。また、どちらの親の味方でもない中立的な立場で面会交流をサポートしてくれます。
さらに、これらの機関では面会交流だけでなく、子どもの受け渡しサービスも提供していることが多く、親同士が直接顔を合わせることなく面会交流を実施することができます。施設内には子どもが遊べるスペースも用意されており、リラックスした環境で面会交流を行うことができます。
費用面では、弁護士に比べて比較的リーズナブルで、1回あたり数千円から1万円程度が相場となっています。ただし、利用希望者が多く、予約が取りにくいという問題もあります。
スーパーバイズ(監視付き)方式の立会い
より深刻なケースでは、単なる立会いではなく、スーパーバイズ(監視付き)方式の面会交流が実施されることがあります。これは、非同居親の言動を常時監視し、不適切な行為があった場合には即座に面会を中止する権限を持った専門スタッフが同席する方式です。
この方式は、DVや虐待の履歴がある場合、子どもに対して不適切な発言をする可能性がある場合、面会交流のルールを守らない行動が繰り返されている場合などに採用されます。立会人は単に同席するだけでなく、会話の内容も注意深く聞き、必要に応じて介入する役割を担います。
スーパーバイズ方式では、面会の様子が詳細に記録され、レポートとして残されることが一般的です。これにより、面会交流の実施状況を客観的に把握することができ、今後の面会交流の継続や条件変更の判断材料として活用されます。
ただし、この方式は非同居親にとって心理的負担が大きく、自然な親子交流を阻害する可能性もあります。そのため、本当に必要な場合に限って実施されるべきものとされています。
4. 第三者立会いの進め方と方法
第三者立会いによる面会交流を実施するためには、適切な手続きと準備が必要です。ここでは、立会いの実現に向けた具体的な進め方と方法について詳しく解説します。
家庭裁判所での調停や審判で取り決める
最も確実で法的拘束力のある方法が、家庭裁判所での面会交流調停や審判において第三者立会いについて取り決めることです。調停では、当事者双方が合意した内容が調停調書に記載され、法的効力を持ちます。
調停での取り決めの際には、立会いの必要性を具体的に説明することが重要です。過去にどのようなトラブルがあったのか、なぜ立会いが必要なのか、どのような立会い方式を希望するのかを明確に伝える必要があります。調停委員は両当事者の事情を聞いた上で、適切な立会い方法を提案してくれることもあります。
調停で合意に至らない場合は、家庭裁判所の審判に移行します。審判では、裁判官が証拠や事情を総合的に判断して、面会交流の実施方法を決定します。立会いが必要と判断されれば、審判書にその旨が明記され、法的義務として立会いでの面会交流が命じられることになります。
審判で立会いが命じられた場合、どのような立会人を選ぶか、費用負担はどうするかなども併せて決定されることがあります。この場合、当事者は審判の内容に従って面会交流を実施する義務があり、正当な理由なく拒否することはできません。
当事者間で合意して立会人を選定する
法的手続きを経ずに、当事者間の話し合いで立会いについて合意するケースもあります。この場合、より柔軟に立会人や立会い方法を決めることができ、双方の希望を反映させやすいというメリットがあります。
当事者間で合意する際のポイントは、立会いの目的と範囲を明確にすることです。単に同席するだけなのか、必要に応じて介入する権限を持つのか、面会の様子を記録するのかなど、立会人の役割を具体的に決めておく必要があります。
また、立会人の選定については、双方が信頼できる人物であることが重要です。できるだけ中立的な立場の人を選び、どちらか一方に偏った判断をしない人を選ぶべきです。親族を立会人にする場合は、子どものことを最優先に考えてくれる人を選ぶことが大切です。
費用負担についても事前に話し合って決めておく必要があります。立会人への謝礼や交通費などをどちらが負担するのか、あるいは分担するのかを明確にしておかないと、後でトラブルの原因となる可能性があります。
公的支援機関を利用する場合の申込み手続き
面会交流支援センターなどの公的機関を利用する場合は、所定の申込み手続きが必要です。多くの機関では、利用前に相談面接を実施し、立会いの必要性や適切な支援方法について検討します。
申込みに際しては、通常以下のような書類の提出が求められます。利用申込書、面会交流の取り決めを示す書類(調停調書や公正証書など)、子どもの状況に関する資料、必要に応じて医師の診断書やカウンセラーの意見書などです。
相談面接では、これまでの面会交流の状況、トラブルの内容、子どもの様子などについて詳しく聞き取りが行われます。この情報を基に、どのような立会い方法が適切かを専門スタッフが判断し、支援プランを提案してくれます。
利用が決定されると、初回の面会交流の日程を調整します。多くの機関では、最初の数回は試行的に実施し、子どもや親の様子を見ながら支援方法を調整していきます。定期的に見直しを行い、必要に応じて支援内容を変更することも可能です。
立会い当日の流れ(集合・面会・解散)
立会い付きの面会交流当日は、事前に決められたスケジュールに従って進行します。一般的な流れを見てみましょう。
まず集合時間の30分前には、立会人が指定場所に到着し、準備を行います。同居親と子どもが到着すると、立会人が子どもの様子を確認し、必要に応じて簡単な会話をして緊張をほぐします。非同居親が到着すると、立会人が双方に当日の流れを説明し、注意事項を確認します。
面会交流中は、立会人が適切な距離を保ちながら親子の様子を見守ります。自然な親子交流を妨げないよう配慮しながらも、必要に応じて助言や介入を行います。子どもが疲れた様子を見せたり、不安になったりした場合は、適宜休憩を取るなどの対応をします。
面会時間の終了が近づくと、立会人が時間を知らせ、お別れの準備をします。子どもが別れを嫌がる場合や、逆に早く帰りたがる場合などは、状況に応じて適切に対応します。最後に、立会人が当日の様子について簡単にまとめ、必要に応じて次回に向けての助言を行います。
5. 費用面のポイント
第三者立会いを利用する際の費用は、選択する立会い方式によって大きく異なります。継続的な利用を考える上で、費用面の把握と計画は非常に重要です。
親族や知人に依頼する場合の基本的な無料性
親族や知人に立会いを依頼する場合、基本的には無料で協力してもらえることが多いです。特に祖父母や兄弟姉妹などの近親者の場合、孫や甥・姪のためということで快く引き受けてくれることが期待できます。
ただし、完全に無料というわけではなく、立会人の交通費や、面会交流中の飲食費などは負担する必要があります。また、立会人が仕事を休んで協力してくれる場合は、その分の収入減についても配慮すべきでしょう。
長期間にわたって協力してもらう場合は、感謝の気持ちを込めて適度な謝礼を渡すことも検討すべきです。金額の相場は特にありませんが、1回あたり3,000円から5,000円程度を目安とし、お中元やお歳暮なども含めて年間を通じて感謝を表すことが大切です。
また、親族や知人に依頼する場合は、立会人の負担を考慮して、面会交流の回数や時間を調整することも重要です。毎週末に長時間の立会いを依頼するのは負担が大きすぎるため、月2回程度に調整したり、面会時間を短縮したりする配慮が必要です。
弁護士や専門家に依頼する場合の費用相場
弁護士に立会いを依頼する場合の費用は、1回あたり3万円から10万円程度が相場となります。弁護士の知名度や経験、地域によって費用は異なりますが、一般的には時間単位での料金設定となることが多く、1時間あたり1万円から3万円程度が目安です。
弁護士による立会いでは、単に同席するだけでなく、法的な観点から面会交流の状況を記録し、レポートを作成してもらうことも可能です。このような付加サービスがある場合は、別途文書作成費用として数万円が加算されることがあります。
心理カウンセラーや臨床心理士などの専門家に依頼する場合は、1回あたり1万円から3万円程度が相場です。これらの専門家は子どもの心理面についての専門知識を持っており、面会交流中の子どもの様子を専門的な視点から観察し、適切なアドバイスを提供してくれます。
ただし、専門家による立会いは費用が高額になるため、継続的な利用は現実的ではありません。多くの場合、最初の数回のみ専門家に依頼し、状況が安定してきたら他の方法に切り替えるという使い方が一般的です。
面会交流支援センター利用時の費用(1回数千円程度が多い)
面会交流支援センターの利用料金は、1回あたり3,000円から10,000円程度が一般的です。公的機関が運営している場合はより安価で、民間団体の場合はやや高額になる傾向があります。
費用の内訳としては、立会いサービス費用、施設利用料、スタッフの人件費などが含まれています。一部の支援センターでは、利用者の収入に応じた減免制度を設けており、生活保護受給者や低所得世帯については利用料を減額または免除する場合もあります。
支援センターによっては、子どもの受け渡しサービスも提供しており、この場合は追加料金が発生することがあります。受け渡しサービスの料金は1回あたり1,000円から3,000円程度が相場です。
また、初回利用時には別途登録料が必要な場合もあります。登録料は5,000円から10,000円程度で、利用者の情報登録や初回相談などの費用として設定されています。
費用負担の原則(依頼者負担)と分担の可能性
第三者立会いの費用負担については、基本的には立会いを希望した当事者が負担するのが原則です。同居親が立会いを希望した場合は同居親が、非同居親が希望した場合は非同居親が費用を負担することになります。
ただし、家庭裁判所の調停や審判で立会いが命じられた場合は、費用負担についても話し合いや決定の対象となります。子どもの福祉を考慮して立会いが必要と判断された場合は、双方で費用を分担することが適切とされる場合もあります。
費用分担の割合は、各当事者の収入や経済状況を考慮して決められることが一般的です。例えば、同居親の年収が300万円、非同居親の年収が600万円の場合、1:2の割合で費用を分担するといった具合です。
また、立会いが必要になった原因によって費用負担を決める場合もあります。DVやモラハラが原因で立会いが必要になった場合は、加害者側により多くの負担を求められることがあります。一方、子どもの不安が原因の場合は、双方で平等に負担することが多くなります。
費用負担についてトラブルを避けるためには、立会いを開始する前に明確に取り決めておくことが重要です。口約束ではなく、書面で記録しておくことをお勧めします。
6. 第三者立会いのメリットとデメリット
第三者立会いには明確なメリットがある一方で、デメリットや制約もあります。利用を検討する際は、これらを総合的に考慮して判断することが重要です。
メリット:安心感の確保、トラブル防止、子どもの心理的安定
第三者立会いの最大のメリットは、すべての関係者に安心感をもたらすことです。同居親にとっては、面会交流中の子どもの安全が第三者によって見守られているという安心感を得ることができます。特に、過去にトラブルがあった場合や、非同居親の行動に不安がある場合、この安心感は非常に重要です。
非同居親にとっても、後から「こんなことを言った」「こんなことをした」と一方的に非難されるリスクを回避できるというメリットがあります。客観的な証人がいることで、面会交流の内容が正確に記録され、誤解や曲解を防ぐことができます。
子どもにとっても、「何かあっても助けてもらえる」という安心感が心理的安定につながります。特に、非同居親との関係に不安を感じている子どもや、人見知りが強い子どもにとって、信頼できる第三者がいることは大きな支えとなります。
トラブル防止の効果も見逃せません。第三者がいることで、感情的になりがちな元夫婦が冷静さを保ちやすくなり、子どもの前での不適切な言動を抑制する効果があります。また、面会時間や約束の遵守についても、第三者が客観的に管理することで、ルール違反の防止に役立ちます。
さらに、立会人が面会交流の専門知識を持っている場合は、親子関係の改善に向けたアドバイスを受けることもできます。子どもとの接し方、年齢に応じた遊び方、子どもの気持ちの理解方法など、実践的な指導を受けることで、より良い面会交流を実現できる可能性があります。
デメリット:費用・手間の発生、交流の自由度が低下する可能性
一方で、第三者立会いにはいくつかのデメリットもあります。まず、費用面での負担が挙げられます。無料で協力してくれる親族がいる場合を除き、専門機関や専門家を利用する場合は相応の費用が発生します。月2回の面会交流で支援センターを利用した場合、月額1万円から2万円程度の費用が継続的に必要となります。
手続きや調整の手間も無視できません。立会人のスケジュール調整、面会場所の確保、事前の打ち合わせなど、立会いなしの面会交流に比べて多くの手間がかかります。急な日程変更も困難になることが多く、柔軟性に欠ける面があります。
親子交流の自由度が制限される可能性も重要なデメリットです。第三者がいることで、親子が自然に会話したり遊んだりすることが妨げられる場合があります。特に、監視的な色彩の強い立会いの場合、非同居親が萎縮してしまい、本来の親としての姿を子どもに見せることができなくなる可能性があります。
また、子どもにとっても、常に第三者に見られているという状況がプレッシャーとなり、リラックスして親との時間を過ごせない場合があります。本音を話しにくい、甘えにくいといった心理的な壁が生じることもあります。
立会人との相性の問題も発生し得ます。立会人の性格や対応方針が当事者や子どもに合わない場合、面会交流自体がストレスフルなものになってしまう可能性があります。特に、子どもが立会人を嫌がる場合や、立会人の存在を負担に感じる場合は、面会交流の目的である親子関係の維持・改善に逆効果となることもあります。
ケースに応じたバランスの取り方
第三者立会いのメリットとデメリットを踏まえ、個々のケースに応じて適切なバランスを取ることが重要です。まず、立会いの必要性を正しく評価することから始めましょう。
安全上の懸念が高い場合や、過去に深刻なトラブルがあった場合は、一時的にデメリットを受け入れてでも立会いを優先すべきです。一方、単なる感情的な対立が原因の場合は、他の解決方法も検討してみることが大切です。
段階的なアプローチも効果的です。最初は厳格な立会いから始めて、状況の改善に応じて徐々に立会いの程度を緩和していく方法です。例えば、最初は専門スタッフによる監視付き面会から始めて、問題がなければ支援センターでの立会いに移行し、最終的には親族による軽度の立会いや、立会いなしの面会交流に発展させることを目指します。
立会人の選択も重要なポイントです。子どもの年齢や性格、これまでの経験を考慮して、最も適した立会人を選ぶことが大切です。小さな子どもの場合は親しみやすい女性スタッフ、思春期の子どもの場合は同性のカウンセラーなど、子どもが安心できる立会人を選択しましょう。
費用対効果の観点からも検討が必要です。高額な専門家による立会いが本当に必要なのか、より安価な支援センターでも同様の効果が得られるのではないか、親族による協力で十分なのではないかなど、費用と効果のバランスを慎重に評価しましょう。
7. 実践チェックリストとまとめ
第三者立会いによる面会交流を成功させるために、以下のチェックリストを参考に準備と実施を進めていきましょう。
なぜ立会いが必要かを明確にする
まず、立会いが必要な理由を明確にすることが重要です。単に「なんとなく不安だから」という理由では、継続的な立会いの実施は困難です。具体的にどのような問題や懸念があるのかを整理し、立会いによってその問題がどのように解決されるのかを明確にしましょう。
チェックポイント:
- 過去にどのようなトラブルがあったかを具体的に記録していますか?
- 子どもはどのような不安や心配を表現していますか?
- 立会いがない場合に想定されるリスクを具体的に挙げられますか?
- 立会いによって期待する効果を明確に説明できますか?
これらの点を整理することで、適切な立会い方式を選択でき、立会人や支援機関に対しても適切な説明ができるようになります。また、家庭裁判所での調停や審判においても、立会いの必要性を説得力を持って主張することができます。
適切な立会人・機関を選ぶ
立会いの目的と状況に応じて、最も適切な立会人や機関を選ぶことが成功の鍵となります。選択の際は、専門性、中立性、継続性、費用のバランスを考慮する必要があります。
チェックポイント:
- 子どもの年齢や性格に適した立会人を選んでいますか?
- 立会人は両当事者から信頼されていますか?
- 必要な期間にわたって継続的に協力してもらえますか?
- 立会人は面会交流に関する基本的な知識を持っていますか?
- 緊急時の対応方法について事前に話し合っていますか?
親族に依頼する場合は、感情的にならず冷静に判断できる人を選ぶことが重要です。専門機関を利用する場合は、事前に見学や相談を行い、施設の雰囲気やスタッフの対応を確認しておくことをお勧めします。
費用や手続きの負担を事前に把握しておく
立会い付きの面会交流は、費用と手続きの両面で負担が発生します。開始前にこれらを十分に検討し、継続可能な計画を立てることが重要です。
チェックポイント:
- 月額の費用負担を正確に計算していますか?
- 費用負担の分担について合意していますか?
- スケジュール調整の手間を考慮していますか?
- 立会人の都合による日程変更のリスクを理解していますか?
- 長期的な費用計画を立てていますか?
費用については、1回あたりの費用だけでなく、年間を通じた総額を計算することが大切です。また、立会いの頻度を調整することで費用をコントロールできる場合もあるため、柔軟な発想で計画を立てましょう。
子どもの安心と安全を最優先に進める
すべての判断において、子どもの福祉を最優先に考えることが基本原則です。大人の都合や感情よりも、子どもにとって何が最善かを常に問い続けることが重要です。
チェックポイント:
- 子どもの意見や気持ちを聞く機会を設けていますか?
- 子どもの年齢や発達段階に応じた配慮をしていますか?
- 立会いが子どもにとって負担になっていないか定期的に確認していますか?
- 子どもの様子に変化があった場合の対応方針を決めていますか?
- 面会交流の目的である親子関係の改善が図られているか評価していますか?
子どもの反応や様子を注意深く観察し、立会いの方法が適切かどうかを定期的に見直すことが大切です。必要に応じて、立会い方式の変更や一時的な中止も検討する柔軟性を持つことが重要です。
総括
面会交流における第三者立会いは、様々な事情により通常の面会交流が困難な場合の有効な解決策です。DVやモラハラの問題、子どもの不安、親同士の対立など、それぞれの状況に応じて適切な立会い方式を選択することで、安全で安心な親子交流を実現することができます。
立会いの種類は多岐にわたり、親族や知人による無料の立会いから、専門機関による有料のサービスまで様々な選択肢があります。費用や専門性、継続性などを総合的に考慮して、各家庭の状況に最も適した方法を選ぶことが重要です。
ただし、立会いはあくまでも一時的な支援措置であり、最終的には子どもが安心して非同居親と交流できる環境を整えることが目標です。立会いを通じて親子関係の改善を図り、段階的により自然な面会交流への移行を目指すことが大切です。
面会交流は子どもの健やかな成長にとって重要な権利であり、困難な状況にあってもその実現のために努力することが求められます。第三者立会いという制度を適切に活用することで、すべての子どもが安心して両親との関係を維持できる社会の実現に向けて、一歩ずつ前進していくことが重要なのです。
立会い付きの面会交流を検討されている方は、まず専門家や支援機関に相談することから始めてください。個々の状況に応じた最適な解決策が見つかるはずです。子どもの笑顔のために、諦めずに取り組んでいきましょう。

佐々木 裕介(弁護士・行政書士)
「失敗しない子連れ離婚」をテーマに各種メディア、SNS等で発信している現役弁護士。離婚の相談件数は年間200件超。協議離婚や調停離婚、養育費回収など、離婚に関する総合的な法律サービスを提供するチャイルドサポート法律事務所・行政書士事務所を運営。