あなたは児童手当と児童扶養手当の区別がつきますか?
養育費をもらったら、これらの手当はもらえなくなると思っていませんか?
この記事では子づれ離婚を検討されている方むけに、子育てのための公的な手当てと養育費の関係について解説します。
※2024年8月の情報を基に解説しています。
ただし、児童手当の説明は2024年10月の拡充後の内容に沿った記述としています。
※本記事では一般的な事項を簡易な言葉で説明しており、各手当の金額も簡単な値として説明しています。
実際の手当の支給条件や金額は自治体によって異なりますので、詳細については各自治体の福祉窓口へ問い合わせのうえ確認してください。
手当があれば養育費はいらない?
養育費をもらうのはコスパが悪い?
結論から言うと、やり方やあなたの状況次第ではコスパ最強です。
実は養育費をもらっていても、子育てのための公的な手当を合わせて受給できるケースは多いのです。
そうはいっても養育費をもらうのは難しいという方は、ぜひこの記事と合わせて「あなたに合った養育費保証サービスは?養育費保証サービスの違いを解説!」を参照してください。
児童手当と児童扶養手当は違うもの?
児童手当は、18歳未満の子どもがいる家庭であれば必ずもらうことのできる手当です。
子どもの年齢や人数によって異なりますが、子ども1人当たり1~3万円が支給されます。
一方の児童扶養手当は、離婚などの理由で片親となった世帯に対して支給される手当であり、所得制限など一定の条件を満たす場合にのみ支給される手当です。こちらは子どもの年齢や人数、所得によって受給額が大きく変わり、1人当たり3,000円~45,000円程度が支給されます。
児童扶養手当を受給できる家庭は、必ず児童手当の受給対象にもなりますので、両方もらえると考えていいでしょう。
児童扶養手当の所得制限とは?
養育費と児童扶養手当の両取りを考えるうえで、避けて通れないのが児童扶養手当の所得制限です。
児童扶養手当にはかなり厳しい所得制限があり、片親の所得によって段階的に支給額が減額されるのが特徴です。
この児童扶養手当の所得制限には、養育費の受給額の80%が含まれるという点がポイントです。
養育費をもらうことで、児童扶養手当が減額されたり、もらえなくなる可能性があるということです。
また児童扶養手当では、同居親族など、親が子を扶養できない場合に子どもを扶養する義務がある方の所得にも制限が設けられています。そのため、年金を受給している両親との同居や、場合によっては事実上の婚姻関係にあるとみなされる彼氏/彼女との同居によっても、児童扶養手当が支給されなくなる場合がありますので注意が必要です。
なお、児童扶養手当の所得制限に児童手当の受給額は含まれませんので安心してください。
結局、養育費をもらうと児童扶養手当が減るから損なの?
養育費をもらうと児童扶養手当が減るのは事実ですが、養育費をもらうと損になるケースはないと言ってもいいでしょう。
細かくはこの記事の後半で説明しますが、ざっくり2つのケースで考えてみましょう。
自分の収入があまり高くなく、養育費の金額もあまり高くないケース
この場合は、養育費をもらっていても児童扶養手当の減額がされないか、減額されてもわずかであることが多いです。
少なくとも養育費をもらわない場合の児童扶養手当の額よりも、養育費と児童扶養手当の合計額の方がかなり多くなると考えられます。
自分自身の収入がそこそこ高く、養育費の金額もそこそこ高いケース
この場合はご自身の収入額にもよりますが、養育費をもらわなかったとしても初めから児童扶養手当の対象外であったり、対象であっても減額によりもとから児童扶養手当の金額がかなり低いと考えられます。
そこに養育費が加わったとすると、養育費分がほとんど丸々あなたの収入として増えるため、養育費をもらった方が絶対にお得になります。
児童扶養手当があれば子育てできる?
児童扶養手当の所得制限を見てもらうとわかるのですが、児童扶養手当は基本的に貧困世帯のための手当だと考えた方がよいでしょう。片親世帯のおよそ半分が貧困世帯であるという統計もありますので、児童扶養手当が役に立つ制度であることは疑う余地はありませんが、子育てをするには不十分であると言わざるをえないでしょう。
児童扶養手当は本来、どうしても養育費を受け取れない方のための制度であり、ほとんどの方は養育費をきちんと取り決めて受け取った方がいいと考えましょう。
養育費をもらう場合ともらわない場合でどれくらいの差があるの?
ここでは養育費と児童扶養手当を両取りする場合のモデルケースを考えてみましょう。
手当は子どもの年齢によっても増減するため、成人するまでの累積額を月当たりにした金額を目安として見ていきます。
養育費をもらわないケース
ここでは平均的なモデルケースとして、父の年収400万円、母の年収133万円、子が1人で4歳のときに離婚し、母が子を引き取ったケースについて考えてみましょう。
このケースでは児童扶養手当の受給額はおよそ月額45,000円です。
成人まで受給を続けた場合には、13年間で7,020,000円を受給できます。
養育費はもらえないため、月額も13年間の総額も0円です。
児童手当は月額10,000円、13年間で1,560,000円がもらえます。
さらに母の収入は手取りで107万円程度になるため、月額で89,000円程度が可処分所得になります。
合計すると月額で144,000円、13年間の合計では22,464,000円です。
養育費をもらうケース
同じモデルケースで、養育費をもらうケースについても考えてみます。
このケースでは児童扶養手当の受給額はおよそ月額35,000円です。
成人まで受給を続けた場合には、13年間で5,460,000円を受給できます。
養育費は裁判所が公表している基準に近い金額として、月額40,000円をもらうとしましょう。
13年間の合計では6,760,000円になります。
児童手当は養育費をもらっても変わりませんので、月額10,000円、13年間で1,560,000円がもらえます。
さらに母の収入も養育費の有無では変わりません。手取りで107万円程度になるため、月額で89,000円程度が可処分所得になります。
合計すると月額で174,000円、13年間の合計では27,144,000円です。
養育費をもらうことで増えるお金の意味を考えよう!
養育費をもらう場合と貰わない場合とで、モデルケースでは月額3万円、成人するまでに500万円程度の差があることがわかりました。相手の収入が半分の200万円の場合には、この差もおおよそ半分くらいになるでしょう。
この月額3万円、または半分でも月額1万5千円という金額は、子どもの成長にとってどういった意味を持つでしょうか?
仮に養育費をもらわなくても何とか生活が成り立つのだとすれば、このお金はそのまま子どもの未来への投資に使えます。
1つでもいいので習い事をしたり、年に1度でもいいのでどこかへ旅行したり、毎日の食事をしっかり食べたり、ほんの小さなことが子どもの心を健康に育てることにつながります。
一方でやりたいことを我慢したり、珍しい経験ができなかったり、毎日十分な量の食事が出来なかったり、ほんの小さなことが子どもの心を傷つけます。
養育費の取り決め方法は別の記事でも解説していますので、少しでも養育費請求をお考えの方はぜひ、「離婚するときは何を決める?あなたに合った離婚条件の決め方を解説!」もあわせてご覧ください。
まとめ
この記事では、子育てのための公的な手当と養育費の関係について解説しました。
あくまで考え方の解説になりますので、より正確で詳しい情報は、お住まいの自治体のホームページ等でご確認ください。
なお、ここで紹介した児童手当や児童扶養手当以外にも、独自の子育て支援を行っている自治体もありますので、とりあえずお住まいの自治体の福祉窓口へ問い合わせをしてみるのが確実です。