わたしは相手とちゃんと約束したから大丈夫!
でもでも、日本で多くの子どもが養育費をもらえていない理由、ちゃんと知ったうえで対策していますか?
この記事では養育費の不払いが発生する納得の理由と、逃げ得を許さないための対処法について解説します。
※2024年8月の情報を基に解説しています。
※本記事は厚生労働省こども家庭庁の公表する「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査の結果」を踏まえて、一般的な事項を簡易な言葉で説明しています。
なお、解説をわかりやすくするために、読者を離婚後に子どもと同居する親であると仮定して説明をしています。
養育費って、みんなちゃんともらってるの?
養育費はもらえないのが当たり前
養育費は100%もらえる子どもの権利、というのが日本の法律の建前です。
一方で、養育費を実際にもらえている子どもは片親世帯の3人に1人もいません。
何でそんなにもらえてないの?と思われるかもしれませんが、養育費の請求も回収も当事者任せになっている日本では、当たり前の話だといわざるをえません。
子どもと離れて暮らしている間に、相手の子どもへの愛情は次第に薄れていきます。
1人で暮らすのはさみしいので、ほかに夢中になれる趣味を見つける人もいれば、再婚して新しく子どもを設ける人もいるでしょう。
そうした環境の変化によって、心境の変化が生まれます。
そんな中で相手が真っ先に減らしたい支出が、自分の生活に密着していない養育費の支払いです。
養育費の支払いは、離婚した元夫婦の間での約束です。
たとえばクレジットカードの返済と養育費、相手はどちらを優先して支払うと思いますか?
個人間の約束を破ってもすでに破綻した元夫婦間の問題で済みますが、クレジットカードの返済をしなければ社会的な信用に傷がつきます。個人間での約束を、社会的契約よりも優先する人はほとんどいないでしょう。
夫婦関係が破綻したにもかかわらず、請求されてもいない養育費を進んで支払う人はまずいません。
それどころか合意した養育費でさえ、自分に実害がなければ支払わない方が合理的です。
養育費は支払われないのが当たり前。
相手の子どもへの愛情や責任感が経年劣化するのも当たり前。
支払う方が合理的だという状況を作って初めて、養育費を受け取り続けられると考えましょう。
口約束でも約束してれば大丈夫?
養育費を受け取れていない人の半数以上は、そもそも口約束ですら養育費の取り決めを行っていません。
養育費の取り決め方については別の記事で解説していますのでそちらを参照してください。
では実際に養育費の取り決めをしている方は、どうやって取り決めをしているのでしょうか?
実は養育費の取り決めをした人のうち、3人に1人が口約束だけで済ませてしまっているようです。
養育費はこの先何年間にも渡って支払いを続けてもらわなければならないものです。
果たして何年もの間、口約束を守り続けられる人がどれだけいるでしょうか?
また、他の人から見ると、あなたと相手が口約束をしたかどうかはわかりません。
だからだれも、その約束を守るよう相手に働きかけることができないのです。
相手がそんな約束はしていないと言えばそれで終わり。
口約束は約束していないのと同じです。
約束した証拠があれば大丈夫でしょ?
約束した証拠があっても、その証拠に法律上の効果がなければ、実はほとんど意味がありません。
メールやSNSのDM、自分たちでつくって押印した書面、行政書士へ依頼してつくった離婚協議書など、様々なものが証拠になりますが、どれもほとんど意味はありません。
これらの証拠から公正証書というものを作って、初めて法律上の強制力が生まれます。
そしてせっかく約束の証拠を残しているにもかかわらず、残念ながら3人に1人以上は公正証書をつくっていません。
公正証書にすることで、初めて強制執行という手続きを行うことができます。
強制執行というのは、相手が約束を破ったときに、相手の給料や資産を差し押さえて養育費を支払わせる手続きのことです。
公正証書がない場合でも強制執行を行うための裁判を申し立てることが出来ますが、手間と費用がめちゃくちゃかかります。約束の証拠はこの裁判で提出できるので、少し有利になるかもしれませんがそれだけです。
結果として口約束や公正証書以外の書面で養育費を取り決めた方のうち、養育費を受け取り続けられている方は10人に1人しかいません。公正証書の作成については別の記事で詳しく解説していますのでそちらを参照してください。
公正証書があればさすがに大丈夫だよね?
強制執行を行うには、正式な書面(公正証書、調停調書または審判書)が必要です。
これらの正式な書面があれば大丈夫かと思いきや、実は正式な書面がある人でも3人に1人以上が途中で養育費を受け取れなくなります。
強制執行できるのに、なんで養育費を受け取れなくなるの?と思われるかと思いますが、強制執行に手間と費用が掛かりすぎるので、当然といえば当然でしょう。
養育費の平均受給額は月5万円程度ですが、強制執行を弁護士に依頼すると平均で30万円くらいかかります。
強制執行をするのに、半年分の養育費が必要になるのです。
強制執行は弁護士に依頼せずに自分で行うこともできますが、勤務先が安定した大企業や公務員で判明していれば良いものの、そうでない場合には銀行口座などの情報開示、住居の特定、最悪の場合には不動産や動産の差し押さえと競売が必要になるケースもあります。養育費の支払いが止まるタイミングは、転居時や転職時など相手の人生の節目であることも多いので、面倒なケースは思っている以上によく起こります。不動産の差し押さえが必要になるケースでは、予納金とよばれる裁判所へ預けるお金が100万円を超えることも珍しくありません。
強制執行に成功すれば費用は相手に負担させることができますが、強制執行には失敗するケースもあるということを考えると、個人がそうそう気軽に行える手続きではないと言えるでしょう。
さらに悪いことに、強制執行は1度成功したとしても、もう一度養育費の支払いが止まったら再度やらなければならないケースもありますし、そうなるよう計画的に動いて養育費の支払いを逃れようとする方もいます。
たとえば相手が転職していたら、給与の差し押さえをゼロからやり直すことになるのです。
公正証書があるにもかかわらず養育費の支払いを止めようとする相手は、公正証書があっても強制執行は簡単にできないことを理解したうえで支払いを止める、と考えた方がいいかもしれません。
それじゃあ結局どうすればいいの!?
養育費を受け取り続けるための最も良い方法は、正式な書面を作ったうえで養育費保証に加入することです。
養育費保証に入ることで、個人間の約束が社会的な契約に変わります。
保証事業者は日常的に業務として強制執行を行っていますし、一般の個人よりも多くの資金を持っていますので、必要であれば不動産の差し押さえも淡々と行います。
養育費保証について詳しく知りたい方は、別の記事で解説していますのでそちらを参照してください。
2024年の民法改正により、2026年から養育費に関するルールが変わっていく予定です。
まだ実際にどのような運用になっていくのかは明らかになっていませんので、今のうちから養育費保証に加入して備えておくようにしましょう。
まとめ
この記事では養育費が受け取れない理由と、対処方法について解説しました。
養育費は不払いが発生する前に対処するのが鉄則です。
以下の記事も参考にして、あなたと子どものこれからの人生を素晴らしいものにしていただければ幸いです。
「あなたに合った養育費保証サービスは?養育費保証サービスの違いを解説!」
「離婚するときは何を決める?あなたに合った離婚条件の決め方を解説!」
「わたしは養育費保証にはいれる?養育費保証の加入条件と審査を解説!」
「児童手当?児童扶養手当??養育費との関係は?」